“Measuring website usability for visually impaired people-a modified GOMS analysis”の紹介
2006年11月16日 渡辺隆行 (最終更新:
2006年11月18日 13:28
)
Henrik Tonn-Eichstädt, “Measuring website usability for visually impaired people-a modified GOMS analysis”, ASSETS2006
概要
- ターゲットユーザに適合したデザインを複数のアクセシブルWebデザインから決定するためのユーザビリティ評価のモデルを提案.
- GOMS(Goals, Operations, Methods, Selection rules)に基づいた,全盲の視覚障害者のWeb利用戦略のモデル.
- 本モデルは,全盲ユーザがWebを利用する際のユーザビリティ測定に適用できる.
- ユーザの観察とフィールドスタディで判明したことを元に本モデルを構築.
- 古典的GOMSモデルは全盲ユーザのWeb利用に適用するには欠けているところがあるので,それを補った.
- ASSETS2006のWebサイトにこのモデルを適用した.
1. INTRODUCTION
アクセシビリティとユーザビリティの関係:
- W3C/WAI:
- ISO:両者の関連は強い.
- 本論文:「アクセシビリティはユーザビリティの一部」と考える.(ISO13407の「ユーザビリティ」の下位概念である)効果性(effectiveness),効率性(efficiency),満足(satisfaction)が,アクセシビリティ測定にも使える.[渡辺注:ほんまかいな?]
アクセシビリティ評価
- ガイドラインとテスト(評価)ツールに頼っている.
- WCAG 1.0は不完全であることが分かっている.
- テスト(評価)ツールは,自動的にテストできるチェックポイントだけを評価する.技術的な問題は得意.改善方法はほとんど教えてくれない.テスト(評価)ツールは役に立つけど不完全.
- aDesginerは,ガイドライン依存テストツールとは異なり,「視覚障害者のユーザビリティ」に関連する,到達時間に注目.到達時間はナビゲーション可能性に強く関連する尺度.
aDesingerとGOMS
- aDesingerの到達時間は,読み上げ速度と文章の長さに依存.スキップリンクと見出し要素は考慮している.複数のパスの最短時間を表示.
- GOMSモデルを使えば,タスク達成時間を具体的に計算できる.視覚障害者の場合,達成時間を到達時間と考えることができ,[渡辺注:ほんまかいな?]効率性の尺度として利用できる.
- 達成時間を計算することで,ページレイアウトを評価できる.
1.1 User's profile
被験者実験
- 全盲ユーザ16名
- 簡単なタスク(コンテンツを見つける,コンテンツを取得する,要素をactivateする)を特別に用意したアクセシブルなページで実施.
- 特定したタスク(「政治」リンクをクリックしなさい)からそうでないタスク(スポーツに関する段落を見つけなさい)に代わるにつれ,ユーザはタスクに応じた異なった戦略を用いることができる.
- 被験者は,見出しやリンクスキップを使ってページを探索.検索機能を用いた.リンク一覧を使ってリンクをクリック.
- 実験終了後,フォローアップ・インタビュー実施.なぜこの操作をしたとか,気になるところを質問.
その後,2つのフィールドスタディを実施して,広範囲なグループでユーザのスキルを調べた.
- 270名が利用している技術やインターネットの利用行動に関する質問紙に回答.
- 次に150名が異なるデザインのHTMLレイアウトを評価.
これらの調査の結果わかったこと:
- 利用者によって使用する支援技術は異なる.その機能も様々.この機能を考慮してページ構造やアクセシビリティを検討すべき.
- ユーザがスクリーンリーダの機能の一部しか知らなくても.その一部を自信を持って直感的に使う.
- 経験値が高いユーザは,複数のナビゲーション,探求戦略(たとえば,見出しリストを使う,リンクリストを使う,検索機能を使う)を持っている.ある戦略がうまくいかなかったら別の戦略を使う.ページデザインにはこのことも考慮すべき.
- スクリーンリーダの使い方に習熟していても,初めてのページを見るときは初心者.そのサイトがアクセシブルだったら(例: 構造が適切.スキップリンクなどのアクセシビリティ機能がある),ユーザはそのページの構造やレイアウトをすぐに学習し,自信を持ってサイトを使用できる.
- ユーザはスクリーンリーダをカスタマイズしている.話速の調整が最も多い.これ(同じ文章の読み上げにかかる時間がユーザ毎に違う)ゆえ,時間をベースにした分析が困難.
- ウェブサイト内をナビゲーションする前に,全盲のユーザは,ある1ページ内の要素やコンテンツをナビゲーションしなければならない.関連しそうな情報は気に留めて,そうでない情報は無視する.サイト内ナビゲーションと区別するために,ページ内ナビゲーションを「微視的ナビゲーション」と呼ぶべき.
- フォーカスを当てている要素を確認することが,スクリーンリーダを効率的に使用するのに特に重要.ある要素にスキップした時,その要素のメタデータや内容を確認してから,次のナビゲーションが始まる.
2. GOMS
GOMS (Goals, Operators, Methods, Selection Rules):ユーザインターフェースのタスク実行時間の計算に使える工学モデル.複数のデザインを達成時間という視点で比較評価できる.
Card, Moran, and Newell: "The Psychology of Human-Computer Interaction",
Erlbaum Associates, (1983).
- Goal:ユーザが達成したいこと.ゴールを達成したかどうかユーザが評価できる.下位のサブゴールに分かれる.
- Operator:知覚,認知,運動アクション.(分析の最小単位になるのでKeystroke Level Modelを使うことが多い.)例:マウスクリック,打鍵.実行時間は既知のデータを使える.
- Method:サブゴールとオペレータの系列.十分に学習された自動的な実行.
- Selection Rule: メソッド選択のための知識.ユーザ固有だがユーザ内では一定.
GOMSの4つの限界を考慮して分析すべし:
- 熟練者のみに適用可能: 本実験の被験者は高機能は知らなかったが熟練者にはいるだろう.
- 線形なタスクにのみ適用可能: スクリーンリーダの読み上げは線形.
- エラーがないと仮定: 実験サイトはどれも良いデザインがされていると仮定できるので,どのデザインでも生じるエラーの頻度は変わらず,エラーの影響は無視できるだろう.
- 閉じたタスクを仮定:
NGOMSL (Natural GOMS Language)
- プログラム形式で記述.想定する全てのタスクを実行させられる.
- OperatorはKLM単位
本論文では,GOMSの短所を改善.
スクリーンリーダの欠点,特徴,異なる機能,などにより,インタラクションの追加が必要.??
2.1 Basic operators' execution times
- (GOMSモデルで)タスク達成時間を計算するためには,基本的なOperatorにかかる時間を知っておく必要がある.
- 支援技術を使うユーザに関するデータに関しては,点字利用にかかわるOperatorの時間を調べた研究が1件あるだけ.
- そこで,ビデオテープから基本的なOperator遂行時間を得ようと試みた.でも,このようなデータを得ることができるような実験セットアップになっていなかった.
- なので,本論文では具体的なOperator時間は不明のまま,[渡辺注:これはまずいんじゃないですか.羊頭狗肉の感あり.]定性的に議論する.定量化は将来の課題.
2.2 GOMS model for screen reader use
GOMSモデルをゼロから作るのは困難な作業なので,GOMS templateを使った.
オペレータレベルではKLMモデルを使用.
- M: mental
- K: key press
- H: homing
- W: system response/wait
- 不使用 B: button press
- 不使用 P: pointing
- 不使用 D: draw
[渡辺注:以下の記述で不満なのは,ユーザテストの結果を具体的に使っていないこと.論文の記述だけでは根拠が分からない.]
2.2.1 Verification is crucial
前述したように,ユーザはスクリーンリーダの出力を「確認」することにかなりの時間を使っている.
...
これを Mental Operator として記述.
2.2.2 Microscopic Navigation
ページ内の要素をナビゲーションするとき,ユーザは3つの方法を使っていることがわかった.
- Quickキー: 「次の要素」
- リストモード(ある要素をすべてリストするモード):
- 検索機能:
「次の要素」の場合,まず目的の要素タイプかどうかを確認して,次に内容の確認に進む.要素の種類が違ったら内容の確認はしない.
「リストモード」の場合は,要素タイプは分かっているので,確認するのは内容だけ.
[渡辺注:彼らの実験では,上から下に順番に読んでいく行動は見られなかったのだろうか?←我々の実験では頻繁に見られる行動.]
2.2.3 Choices
- GOMSの Selection rule は論理的判断だが,スクリーンリーダユーザの戦略の選択行動には当てはまらない.
- ひとつが失敗したら次の戦略を選ぶ.
- だから,Choices を導入.
2.2.4 Acquiring content
点字を読むのはactiveなプロセス.音声出力を聞くのはpassiveなプロセス.どちらの方法で情報を入手するか Choice するステップがある.
- 音声出力:スクリーンリーダはメタ情報を付加する.
- 点字出力:一行をなぞる作業とスクロール作業の組み合わせ.
音声出力の場合,メタ情報を読むのでその分時間がかかる.
2.2.5 Activating elements
K で記述できる.
2.2.6 Homing
点字と音声を同時に使う場合を考えると H が含まれる.
2.2.7 Text entry
[渡辺注:論文に書いてあるKLMは単純過ぎるのではないか.確認作業は熟練者でもする作業だと思うので,確認に対応するオペレータsが必要だと思う.]
2.2.8 General features
...
2.3 GOMS Summary
3. EXAMPLE ANALYSIS
ASSETS06のWebサイトを題材に本モデルを適応.
3.1 Operator execution times
正確な時間が不明なので,文献18の値を使用.
音声出力に関する時間に関しては,240wpmとする.
3.2 Example page
ASSETSのページはWCAG適合でなかったので,まずはそこを修正.(ページがアクセシブルでなければGOMSモデルを適応できない.)
3.2 GOMS analysis
ここではGoalを限定して,「Instruction」リンクをクリックするというタスクを分析対象にする.
点字と音声の二つの場合の達成時間を4種の戦略(next line, next link, find feature, links list)ごとに計算.
図2:解析の例:ページ先頭から読むときの,音声と点字出力の出力情報を,4種類の戦略ごとにカウント(音声の場合はワード単位,点字は文字単位).不要と判断してユーザが途中でスキップする行為も考慮.
図3:「Instrouction」リンクをクリックするタスクを,4種類の戦略毎にGOMSモデルで解析.点字と音声でのタスク達成時間を算出.それをまとめたのが表1.
表1
| (秒) |
next line |
next link |
find feature |
links list |
| 音声 |
68.36 |
29.34 |
19.43 |
28.49 |
| 点字 |
85.04 |
41.68 |
24.50 |
42.56 |
複数のデザイン候補に対して,このような解析(をいろいろなタスクに対して積算した解析)をすれば,達成時間でデザインを評価できる.
4. SUMMARY/CONCLUSION