はじめに:改正版JIS発行に至るステップ
- WCAG 2.0勧告候補:2008年4月
- (財)情報技術標準化研究センター(INSTAC)で改正原案策定ワーキンググループ立ち上げ:2008年6月,その後,月2回数時間の議論!
- WCAG 2.0勧告:2008年12月
- 改正原案の公開レビュー:2009年1月
- 規格調整委員会で審議:早ければ6月末???
- 日本工業標準調査会(JISC)の情報技術専門委員会で審議:???
- 官報公示:早ければ10月???
JIS X 8341-3改正の背景
注:改正原案策定ワーキンググループが作成したバージョンを元にお話します.委員会での審議を経て,発行までに修正される可能性もあります.
- 工業標準化法第15条「5年ごとに改正のチャンス」,2004年6月発行
- WCAG(世界的なde facto規格)が2.0にバージョンアップされる
- 2004年度版JISの成果をWCAG 2.0原案にフィードバックしてきた
- 欠点:客観的評価(testability)不能,技術依存,Ajax時代に未対応等
- WCAG 2.0と一致させることでWCAG 2.0の利点を取り込み,日本で利用できる規格に改正しよう!
改正のポイント
- JIS X 8341-1を国際提案したISO 9241-20の方向性をできるだけ取り入れる.
- WCAG 2.0の4原則,ガイドライン,達成基準と一致.その他,WCAG 2.0のnormativeもできるだけ取り入れる.
- プロセスに関する要件をさらに吟味
- 適合性評価ができるようにする.できれば,WCAG 2.0と改正版JIS適合を同一にする.
- わかりやすさ,運用しやすさの向上.(でも,厳密性は保ちたい.)
- 2004年度版からの移行ガイドを示す
改正原案策定時に問題となった点
- WCAG 2.0とどこまで一致できるか?
- WCAG 2.0は3レベル,JISは必須と推奨.
- WCAG 2.0のGlossaryをすべて取り込めるか?
- WCAG 2.0の規格としての欠点,文書の欠点,曖昧さをどう補うか
- 適合性をWCAG 2.0と完全に一致? 欧州の取り組みをどう取り込むか?
- Accessibility Supported文書を誰が作成? どうやって作成?
- WCAG 2.0の関連文書(Understanding,Techniquesなど)をどうするか?
- 「(例を示す)わかりやすさ」か「厳密性」か?
- 日本で適用できる達成基準であるか?
- なじみが薄い用語(ヒューリスティック,ロバスト)
JIS改正原案の構成
- 序文,1 適用範囲,2 引用規格
- 3 用語及び定義
- 4 ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
- 5 一般的原則
- 6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件:企画,設計,制作・開発,検証,保守・運用
- 7 ウェブコンテンツに関する要件:知覚可能,操作可能,理解可能,堅牢性
- 8 試験方法:適合試験の要件,試験の手順,試験結果の表示
- 附属書A(参考) この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
- 附属書B(参考) WCAG 2.0との整合性
- 附属書C(参考) 2004年度版と2009年度版の比較
- 附属書D(参考) 参考文献
3 用語及び定義
WCAGのGlossary(83個)は用語の定義というより,なんでもあり.そのままJISの用語に取り込むのは困難.
- 自明なものやJISで既に定義されている用語は削除.
- 1回しか出てこない用語はその場で注記として記載.
- 用語の定義にとどまっていないもの
- Accessibility Supported:附属書Aと6.2で取り上げた
- Conforming alternate version:要求事項として6.2.3で取り上げた
- 32個の用語を,分類して収録
- WCAGのようにリンクにできないのでわかりにくくなった.
4 ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
- WCAGのlevel A,AA,AAAを「ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級」として取り込み,箇条4で定義.
- これにより,達成基準とそれが属するlevelがWCAGが完全に一致.
- 改正版JISの達成基準はすべて必須.しかし,3等級に分かれており,製作者はその等級を選択できる.
- 各等級に属する達成基準の一覧表をつけて利用者の便宜を図った.
5 一般的原則
- WCAG 2.0の4原則を利用
- (JIS X 8341-1を国際提案したISO 9241-20を翻訳した)JIS X 8341-1:2009の一般原則との対応を示した
6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
- 2004年度版JISの内容をさらに詳細化.WCAGには書かれていない要件.
- 開発プロセスの各段階でウェブコンテンツの責任者がしなければならない最低事項とWCAG 2.0で必須となっている要求事項を必須
- 企画段階でのウェブアクセシビリティ方針(目標とする達成等級)の文書化も必須
7 ウェブコンテンツに関する要件
- WCAG 2.0の番号の先頭に7をつければ,対応がわかる.
- なるべくわかりやすい文章となるように意訳.
- 過剰な注記などは削除.
- JISの表記方法に合うように修正.
8 試験方法
- WCAG 2.0のConformanceの一部を採用.たとえばConformance Requirementsの
- 1. Conformance level:箇条4で規定,
- 2. Full pagesと3. Complete Processは箇条8で取り上げ,
- 4. Only accessibility supported...は附属書Aと箇条6で取り扱い,
- 5. Non-Interferenceは箇条6で取り扱った.など
- WCAGにはない「ウェブページ一式(サイト)単位」の試験方法も記述.
- JISの適合性評価の規格を活用する形で試験結果の表示方法を規定.
- そのほか,箇条8をよく読んで理解していただきたい.
詳細:「改正版JIS X 8341-3(予定)を使った試験の方法(梅垣正宏)」
附属書A(参考) この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
- WCAG 2.0は,ユーザエージェント(ブラウザや支援技術など)とコンテンツの役割分担を扱う概念として,Accessibility Supportedを導入.
- 附属書Aでこれについて詳しく解説
- 改正版JISを適切に用いるためには「日本のアクセシビリティ・サポーテッド情報」が必要.
詳細:「改正版JIS X 8341-3(予定)に適合した実装方法(植木真)」
附属書B(参考) WCAG 2.0との整合性
WCAG 2.0と改正版JISの整合性(同じ個所,相違点)を解説.
附属書C(参考) 2004年度版と2009年度版の比較
- 2004年度版の個別要件と改正原案の達成基準との対応を詳細に示す表
- 事実上,両者の差はとても小さい.
改正案JIS利用上の注意
- JISはウェブコンテンツのアクセシビリティ向上のための憲法のようなもの
- 達成基準の意図や具体例は「Understanding WCAG 2.0」参照.
- 各達成基準を満たす具体的な実装方法は「Techniques for WCAG 2.0」が参考になる.
- JISだけに頼らず,ユーザ(高齢者・障害者)の視点を忘れない.
- 同時に,JISからかい離しない.
- StandardはBestである必要はない.Betterであればよい.
- 大事なのは,全員が同じStandardを用いること.つまみ食いや改変は駄目.
JIS改正に合わせて必要な作業
- JISは技術非依存に記述.具体的にどのように実装すればよいか不明⇒「解説書」と「技術例集」
- 日本の支援技術で使える実装方法が不明⇒「日本のアクセシビリティ・サポーテッド情報」
- 適合性評価ができる⇒適合性評価に必要なチェックリストなどの整備,適合性評価支援組織
- 適合性評価やコンテンツ制作の助けとなる評価ツール⇒「評価ツールの標準仕様」,「テストファイル」
- JISに適合したコンテンツのアクセシビリティ機能を活用⇒「安価で高機能なスクリーンリーダ」とユーザ教育
- 「みんなの公共サイト運用モデル」の改訂
- 普及啓蒙,支援組織
協力者募集
- 「JIS解説書」:Understandingの翻訳,追記修正
- 「JIS技術例集」:Techniquesの(SufficientとCommon Failuresの)翻訳,追記修正
- 「テストファイル」:正しい確認用,間違い確認用
- 「日本のアクセシビリティ・サポーテッド情報」
- その他
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