Webのアクセシビリティ問題と日本とW3Cのガイドライン

渡辺隆行 (東京女子大学現代文化学部)
7 March, 2005

  1. Title Page
  2. 目次
  3. I. World Wide Web
  4. I.1 Webの重要性と利点
  5. I.2 Webの問題
  6. II. ガイドライン
  7. II.1 日本のガイドライン:JIS X 8341-3
  8. II.2 W3CのWCAG
  9. III. ガイドラインの国際協調
  10. IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して
  11.  付録

Webのアクセシビリティ問題と日本とW3Cのガイドライン

渡辺隆行 (東京女子大学現代文化学部)

特定領域「情報福祉の基礎」第一回成果報告会

7 March, 2005

http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/WA200503/

目次

  • I. World Wide Web
    • I.1 Webの重要性と利点
    • I.2 Webの問題
  • II. ガイドライン
    • II.1 日本のガイドライン: JIS X 8341-3
    • II.2 W3CのWCAGガイドライン
  • III. ガイドラインの国際協調
    • III.1 日本語で顕著なWebアクセシビリティ問題
    • III.2 International Standard Harmonization
  • IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して

このHTMLスライドは,"xsltSlidemaker"で作成され,画面表示,プロジェクション,印刷用のスタイルシートを持っています.)

I. World Wide Web

  • 私は,INSTACに設置された「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会」主査及びW3CWCAG WGメンバーとして活動中.
  • この講演では,ウェブのアクセシビリティ,特にWebコンテンツのアクセシビリティ・ガイドラインについて述べる.
  • 発表資料はWebで公開(http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/WA200503/).

I章では,Webの重要性及びアクセシビリティから見たときの利点について説明する.

  • I. World Wide Web
    • I.1 Webの重要性と利点
    • I.2 Webの問題
  • II. ガイドライン
  • III. ガイドラインの国際協調
  • IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して

I.1 Webの重要性と利点

"The power of the Web is in its universality. Access by everyone regardless of disability is an essential aspect."
-- Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web

I.1.1 Webは重要

  • パソコンや携帯電話でWebが普及:検索,ニュース,乗換ルート,買物,Webメール
  • 電子政府の普及:Webを使えなければ公共生活に困る.

I.1.2 Webの利点

  • ソフトウェアがWeb上のデータの意味を理解して情報処理.
  • 利用者に適合して情報提示できるので,アクセスしやすいはず.
  • データの論理構造をマークアップ,見せ方をスタイルシートで指定:データと見せ方を分離可能
  • W3CのWAIは,W3Cが定める技術のアクセシビリティチェックや,Webのアクセシビリティに関するガイドラインの策定などを行っている.

I.2 Webの問題

現実は,誰もが利用できるようには なっていない.

I.2.1 根本的な問題

画面表示が前提のWebを音声表示するのは難しい
  • 画面表示:2次元にレイアウト,ブラウズしやすい,フォントの種類が情報を持つ.
  • 音声表示:シークエンシャルアクセス,画面表示の利点が無い.
Webメディアの特性の理解不足
  • 紙に描いたポスターのようにWebを捉えて,見た目でデザインしがち.
  • ハイパーリンク可能なWebは複雑な構造体なのでよく考えて作る必要あり.実際は,パンフレットのように,材料を集めてから見た目良く配置するだけ.
  • 即時性に優れたメディア.パンフレットとは違って,作成後もメインテナンスが必要.
Webのアクセシビリティ問題の研究不足
  • データや研究が不足.ガイドラインの妥当性や有効性を客観的に示せない.
  • Webでは,人間からソフトウェアまで様々な要因が絡んでくる.体系的に分類しないと,相互に関連した要因を正しく理解できない.
  • ユーザビリティとアクセシビリティが分離しがち.
Webの自由さとの拮抗
要素が閉じていなくても,Webブラウザは適当に表示してくれる.こうした容易さゆえにWebは広がった.しかしアクセシビリティへの配慮は品質管理と同じく,自由さをある程度制限する.

I.2.2 技術の問題

Web技術のアクセシビリティ機能が不足
  • W3Cが策定した技術:アクセシビリティへの配慮がなされているはず.
  • W3C以外の技術:PDFやFlashなどもアクセシビリティ機能を持っているが,まだ不十分.
Web利用ソフトウェア(User agent)の機能不足
  • ブラウザによってスタイルシートの対応状況が異なる.WCAGなどのアクセシビリティガイドラインに準拠してコンテンツを作成しても,ユーザエージェントが標準仕様に準拠していなければ,コンテンツを利用できない.
  • スクリーンリーダや音声ブラウザの機能が貧弱なため,せっかく(X)HTMLでマークアップしてあっても,各要素の違いを音声で表示できないとか,テーブル要素をわかりやすく読み上げることができない.
多様なWebの利用者への配慮が困難
  • アクセシビリティはコンテンツを人間が利用するときに生じる問題なので,利用者の特性・能力・環境・嗜好にコンテンツ提供の機能が適合していなければならない.しかし,一つのコンテンツであらゆる利用者に適合させることは難しい.利用者の特性などに合わせてコンテンツの提供の仕方や見せ方を変える技術は未だ発達段階.

I.2.3 Webアクセシビリティの認識と理解の不足

  • そもそも障害者がWebを利用していることを知らなかったり,利用していることを知ってはいてもどのように利用しているのかや,どのような問題があるのかまでは知らないことが多い.
  • アクセシビリティに配慮したWebサイトの構築方法がわからない.わかりやすい解説書,技術書,啓蒙書が必要.
  • 使いやすいチェックリストやテストツールがまだ不足している.
  • Webは新しいメディアであるので,誰もその特性や正しい使い方やアクセシビリティのことを学校で学んでいない.中高生の段階でこうしたことを教えることができれば,認識と理解が深まるはず.

I.2.4 制作側の問題

コストに見当ったメリットが得にくい
コスト(費用や時間など)に見当った目に見えるメリット(アクセス数の増加など)が得られない,あるいは得られないと思われている.ツールの整備でコストを下げ,法制化でメリットをあげるのが有効かも.
Webコンテンツ作成時のアクセシビリティへの配慮が不足
Webは下記に示すような方法で作成されているが,それぞれに問題がある.
  • Web作者がエディタでタグを挿入しながら作成する場合,アクセシビリティガイドラインに配慮していなかったり,Web技術のアクセシビリティ機能を利用できていない場合が多い.
  • オーサリングツールを使えば作者に(X)HTML等の知識は不要であるが,オーサリングツールのアクセシビリティ機能が不十分な場合が多い.
  • サーバサイド・ソフトウェアがコンテンツを自動作成したり,blogのようにフレームワークがあらかじめ決っていてデータだけを利用者がWebインターフェースから追加することでWebページを作成したりするケースが増えている.こうしたソフトウェアが,アクセシビリティに配慮したコンテンツを出力できていない.

II. ガイドライン

II章では,Web問題を解決するための主要な方法となっている,ガイドラインについて説明する.

  • I. World Wide Web
  • II. ガイドライン
    • II.1 日本のガイドライン:JIS X 8341-3
    • II.2 W3CのWCAGガイドライン
  • III. ガイドラインの国際協調
  • IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して

II.1 日本のガイドライン:JIS X 8341-3

II.1.1 JIS X 8341 の概要

情報通信における機器,ソフトウェア及びサービスを設計する際に,高齢者・障害者等に配慮すべき点を示したガイドライン群.

Three-layer framework of JIS X 8341

  1. 基本規格:JIS Z 8071 (ISO/IEC Guide 71と同一) ”高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針”.アクセシビリティガイドラインを策定する際に参考にすべき指針.
  2. グループ規格:JIS X 8341-1 ”高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第1部:共通指針”
  3. 個別規格:JIS X 8341-2 ”第2部:情報処理装置,JIS X 8341-3 ”第3部:ウェブコンテンツ”.2005年度に第4部以降も刊行予定.

「工業標準化法」第67条(日本工業規格の尊重)に「国及び地方公共団体は、買入れる鉱工業製品に関する仕様を定めるとき日本工業規格を尊重しなければならない」と書かれているので,国及び地方自治体に影響する.

II.1.2 JIS X 8341-3

2004年6月に策定された,日本初の公的なWebコンテンツのアクセシビリティ・ガイドライン.

  1. ISO/IEC Guide 71の枠組みで開発
  2. 主として公共分野が対象
  3. 現在の日本の技術(ウェブブラウザやスクリーンリーダなど)の能力に配慮
  4. 日本語固有の問題を取り上げている
  5. プロセス(企画,設計,開発,制作,保守及び運用)における配慮点にも言及
  6. 国際協調に配慮:JIS X 8341-3 = WCAG 1.5(1.0と2.0の中間) ± α.
  7. 多数の具体例をカラーでわかりやすく記述

II.1.3 JIS X 8341-3 の目次

  • 序文
  • 1. 適用範囲
  • 2. 引用規格
  • 3. 定義
  • 4. 一般的原則
  • 5. 開発及び制作に関する個別要件
  • 6. 情報アクセシビリティの確保・向上に関する全般的要件
  • 付属書1 (参考) ウェブコンテンツに関連する例示
  • 付属書2 (参考) 関連規格
  • 解説

II.1.4 JIS X 8341-3

5. 開発・制作に関する個別要件:
開発・制作において配慮すべき技術的な要件39個を規定.主として開発・制作者が参照.「5章の詳細」
6. 情報アクセシビリティの確保・向上に関する全般的要件:
企画から保守・運用に至る(全般的な)プロセスにおいて配慮すべき個別的な要件5個を規定.主として運用管理・運用担当者が参照.「6章の詳細」

5章の例:「5.5 色及び形」
5-5の例2の図

II.1.5 JIS の購入・閲覧

JISの検索・購入:
JSA Web Store」
JISのオンライン閲覧:
「JIS 検索」

JIS X 8341-3のWGでは,JIS X 8341-3の技術解説を作成中.2005年度前半に,日本規格協会のINSTAC(情報技術標準化研究センター)のWebサイトで公開予定.

II.2 W3CWCAG

II.2.1 W3C

Web技術の標準化と推進を目的とした,会員制(年会費700万円)の国際企業コンソーシアム

  • Architecture: Webを支える基盤技術(HTTP, XML, Web Services, ...)
  • Interaction: ブラウザなどのユーザが利用する技術(HTML, MathML, SVG, CSS, ...)
  • Technology and Society: 実社会で利用する際に必要となる技術(P3P, Semantic Web, ...)
  • Web Accessibility Initiative: 障害者を含む誰もが使えるWeb(ガイドライン,ツール, ...)

II.2.2 WAI

技術,ガイドライン,ツール,教育,研究開発によってWebアクセシビリティを追求

WAIの活動内容:
  • Technical Activity: 技術,ガイドライン,ツールを開発
    • Protocols and Formats WG: W3Cが定める仕様のアクセシビリティをチェック
    • Web Content Accessibility Guidelines WG ←後述
    • Authoring Tool Accessibility Guidelines WG
    • User Agent Accessibility Guidelines WG
    • Evaluation and Repair Tools WG
  • International Program Office Activity: 関連組織との連携
    • WAI Interest Group
    • Education and Outreach WG
    • Research and Development Interest Group
    • WAI Coordination Group
最近のWorking Drafts:

II.2.3 WCAG WG

WCAG 1.0:1999年にW3Cの勧告になった
WCAG 2.0:2004年度完成を目指して策定中

II.2.4 WCAG 2.0の概要

(1) WCAG 2.0 WDの構成

  1. アクセシビリティの4大原則: ウェブ利用時に生じる一般的な4大原則.
    1. Perceivable:利用者がウェブコンテンツを認知できる.
    2. Operable:利用者がウェブコンテンツのインターフェース要素を操作できる.
    3. Understandable:利用者がウェブコンテンツやコンテンツのコントロール要素を理解できる.
    4. Robust:ウェブコンテンツが現在のみならず将来の技術に渡って利用できる.
  2. 技術非依存のガイドライン :13個のガイドラインを4大原則に分類.
  3. ガイドラインごとの達成基準:レベル1からレベル3までの達成基準を定義.
    • L1:通常の支援技術やユーザエージェントでウェブコンテンツを利用する際に最低限のアクセシビリティを達成する基準で,すべてのWebコンテンツに適用できるもの.
    • L2:ユーザエージェントの能力をさらに活用する かつ/又は 障害者に特別なことを要求せずにアクセシブルなコンテンツを提案する ことによりアクセシビリティを向上できる基準で,すべてのWebコンテンツに適用できるもの.
    • L3:L1やL2以上の要求をする基準

「WCAG 2.0の詳細」

(2) WCAG 2.0利用上の注意

  • テスト可能な達成基準:WCAG 2.0の中心は達成基準.すべての達成基準は,コンピュータプログラムでテストできる,又は複数の専門家が同じ結果を得るという意味でテスト可能である.(今後,チェックリストとして達成基準を用いる方向にWCAG 2.0が修正される予定.)
  • 優先度ではなくレベル:WCAG 1.0のようにチェックポイントに優先度をつけるのではなく,達成基準を3レベルに分類.
  • 技術非依存な記述なので,ガイドラインだけではわかりにくい.
  • Authoring toolATAG 2.0 WDにも注意を払うべし.
  • User agent:WCAG 2.0に準拠したコンテンツを作成しても,標準仕様を満たさないユーザエージェントを利用する場合はアクセシブルにならない.そこでWCAG 2.0は,UAAG 1.0の優先度1を満たしたユーザエージェントがbase lineとして利用されると仮定.(異論もある)

III. ガイドラインの国際協調

  • 国内ではJISが使用されるが,国際的にはWCAG 2.0が事実上の標準
  • III章では,JIS X 8341-3とWCAG 2.0の国際協調の取り組みについて説明
  • まずIII.1章で,JIS策定でわかった問題として,日本語特有のWeb問題を説明
  • I. World Wide Web
  • II. ガイドライン
  • III. ガイドラインの国際協調
    • III.1 日本語で顕著なWebアクセシビリティ問題
    • III.2 International Standard Harmonization
  • IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して

III.1 日本語で顕著なWebアクセシビリティ問題

漢字文化圏で顕著となる以下の問題をWCAG WGに提案した.

見た目が似ている文字:'ー' (長音), '―' (全角ダッシュ), '-' (全角マイナス)
かな漢字変換で間違えやすい."リード"は正しいが,"リ―ド"は間違い.見た目には間違いに気づかないが,読み上げると意味を成さない.英語の例:'0' (zero) と 'O' (o), '1' (one) と 'l' (l).
読みにくい文字:"聾"
画数が多い文字は,フォントサイズを大きくするか,読みやすいデザインのフォントを用いないと読みにくい.
読みが決まらない単語:"三田","行った"
固有名詞などは,読みが難しいので,何らかの方法で読み方を付与しておく必要がある.英語にも同例がある.晴眼者は読めなくても漢字を認識できるが,視覚障害者は音声化ソフトの読み上げ方に依存する.
縦書き
Webページで縦書きを実現するために,1文字ごとに改行要素を挿入している場合がある.見た目には縦に並んだ単語に見えても,(X)HTML的にはばらばらの文字の並びに過ぎないので,読み上げソフトは正しく音声化できない.

言語関連のその他の問題

複数の文字コード
正しい文字コードが明記されてない場合は文字化けの原因となる.欧州言語の文字コードも事情は同じ.
複数の文字集合
利用者が多い MS Windowsは,JIS X 0201 及び JIS X 0208以外の特有の漢字(丸付き数字やローマ数字など)を含む.そのため,他の環境で文字化けする.
複数の文字種
振り仮名は,表音文字の「ひらがな」でも「カタカナ」でも書ける.数字は,ASCII 7 bit(JIS X 0201)の半角数字でも,JIS X 0208の全角数字でも書ける.FORM要素に氏名の振り仮名を入力するときに,このようなあいまいさが問題になる.(しかし,FORMを処理するスクリプトが賢ければ,ひらがなでもカタカナでも全角数字でも半角数字でも処理できるはず.)
日時の表記方法の曖昧さ
"2005/07/19"は曖昧な表記法なので,日付として読み上げられない場合がある.
表意文字として利用される全角記号の曖昧さ:☆, ★, ※, *
日本語は,文字の種類が多い.全角記号もいろいろあり,違いが曖昧.使用意図が第3者に明白でないので,問題を生じやすい.

III.2 International Standard Harmonization

  • 日本に JIS X 8341-3 ができたのは大きな前進.
  • 世界的にはW3CのWCAGが事実上の標準であり,欧州ではそのまま採用している国もある.
  • 国際的な標準機関のISOと日本(JIS)は密接な関係にあるが,ISOにはWebアクセシビリティに関する規格はない.

III.2.1 JIS X 8341-3とWCAG 2.0の関係

  • JIS X 8341-3は,WCAG 1.0を参考にし,WCAG WGで策定中のWCAG 2.0にも注意を払って策定された.
  • INSTACの「ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会」は,WCAG WGと協力して,両ガイドラインの協調を図っている.
  • 2004年3月に,INSTACのWGとして,CSUNでJIS X 8341-3とWCAG 1.0及び2.0との違いを発表,2004年9月にWCAG WGに対して,JIS WGから日本語で顕著となる問題を提案.
  • 国際協調という点では,JIS X 8341-3の優れた点をWCAG 2.0に取り込み,国際的に適用できるガイドラインにしたうえで,WCAG 2.0がISOに提案されるのが望ましい.

III.2.2 JIS X 8341とISOの関係

  • ISO/IEC Guide 71は,1998年に日本が提案し,2001年にISOになった.
  • JIS Z 8071は,2003年にISO/IEC Guide 71を翻訳してJISにしたもの.
  • JIS Z 8071に沿ってJISを策定する委員会が2001年に立ち上がり,JIS X 8341-1,8341-2,8341-3が2004年に刊行された.
  • 共通規格のJIS X 8342-1がISOで審議されることが2004年に決まった.

III.2.3 W3C以外との国際協調

  • 国際的に適用できるガイドラインを作成するためには,日本以外の非英語圏,特に漢字を使うアジア諸国でも適用できるようにすることが重要.
  • 韓国では2003年に独自のWebガイドランを作成しているが,W3CのWCAG 2.0とはかなり内容が異なっている.
  • Webのアクセシビリティ向上には,音声合成機能や音声ブラウザ及びスクリーンリーダなどの支援技術も必要になる.しかし,これらの技術レベルは,国によって大きく異なる.

IV. おわりに:誰もが使いやすいWebの実現を目指して

  1. I章で,Webにはどのような問題があるかを概観した.
  2. ガイドラインは,アクセシビリティ問題を解決するひとつの方法である.
  3. II章で,日本とW3Cのガイドラインを紹介し,III章でガイドラインの国際協調を紹介した.
  4. I章で取り上げた問題を解決するには,Webコンテンツのアクセシビリティガイドラインだけでは不足している.
    • ガイドラインの技術解説やチェックツール,User AgentやAuthoring toolのガイドラインも必要.
    • 音声ブラウザやスクリーンリーダなどの機能向上とガイドラインへの準拠が必要.
    • ...
  5. 学術的な取り組みが必要.
    • ガイドラインの根拠が無い.
    • ガイドラインの有効性が示されていない.
    • 情報提示の根本的な困難さを解決する手法が必要.
    • 音声表示の手法が未熟.
    • ...

 付録

付録として,JIS X 8341-3の5章と6章の要件,WCAG 2.0 WDのガイドライン一覧を収録する.

JIS X 8341-3 5章: 開発及び制作に関する個別要件

開発・制作において配慮すべき技術的な要件を規定.主として開発・制作者を対象.「しなければならない」レベルと「望ましい」レベル,及びその混合レベルの個別要件がある.

  • 5.1 規格及び仕様
    • a) ウェブコンテンツは,関連する技術の規格及び仕様に則り,かつ,それらの文法に従って作成しなければならない。
    • b) ウェブコンテンツには,アクセス可能なオブジェクトなどの技術を使うことが望ましい。
  • 5.2 構造及び表示スタイル
    • a) ウェブコンテンツは,見出し,段落,リストなどの要素を用いて文書の構造を規定しなければならない。
    • b) ウェブコンテンツの表示スタイルは,文書の構造と分離して,書体,サイズ,色,行間,背景色などをスタイルシートを用いて記述することが望ましい。ただし,利用者がスタイルシートを使用できない場合,あるいは意図的に使用しないときにおいても,ウェブコンテンツの閲覧及び理解に支障が生じてはならない。
    • c) 表は,分かりやすい表題を明示し,できる限り単純な構造にして,適切なマーク付けによってその構造を明示しなければならない。
    • d) 表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい。
    • e) ページのタイトルには,利用者がページの内容を識別できる名称を付けなければならない。
    • f) フレームは,必要以上に用いないことが望ましい。使用するときは,各フレームの役割が明確になるように配慮しなければならない。
    • g) 閲覧しているページがウェブサイトの構造のどこに位置しているか把握できるように,階層などの構造を示した情報を提供することが望ましい。
  • 5.3 操作及び入力
    • a) ウェブコンテンツは,特定の単一のデバイスによる操作に依存せず,少なくともキーボードによってすべての操作が可能でなければならない。
    • b) 入力欄を使用するときは,何を入力すればよいかを理解しやすく示し,操作しやすいよう配慮しなければならない。
    • c) 入力に時間制限は設けないことが望ましい。制限時間があるときは事前に知らせなければならない。
    • d) 制限時間があるときは,利用者によって時間制限を延長又は解除できることが望ましい。これができないときは,代替手段を用意しなければならない。
    • e) 利用者の意思に反して,又は利用者が認識若しくは予期することが困難な形で,ページの全部若しくは一部を自動的に更新したり,別のページに移動したり,又は新しいウィンドウを開いたりしてはならない。
    • g) ウェブサイト内においては,位置,表示スタイル及び表記に一貫性のある基本操作部分を提供することが望ましい。
    • h) ハイパーリンク及びボタンは,識別しやすく,操作しやすくすることが望ましい。
    • i) 共通に使われるナビゲーションなどのためのハイパーリンク及びメニューは,読み飛ばせるようにすることが望ましい。
    • j) 利用者がウェブコンテンツにおいて誤った操作をしたときでも,元の状態に戻すことができる手段を提供しなければならない。

  • 5.4 非テキスト情報
    • a) 画像には,利用者が画像の内容を的確に理解できるようにテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
    • b) ハイパーリンク画像には,ハイパーリンク先の内容が予測できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
    • c) ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な音声情報には,聴覚を用いなくても理解できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
    • d) 動画など時間によって変化する非テキスト情報には,字幕又は状況説明などの手段によって,同期した代替情報を提供することが望ましい。同期して代替情報が提供できない場合には,内容についての説明を何らかの形で提供しなければならない。
    • e) アクセス可能ではないオブジェクト,プログラムなどには,利用者がその内容を的確に理解し操作できるようにテキストなどの代替情報を提供しなければならない。また,アクセス可能なオブジェクト又はプログラムに対しても,内容を説明するテキストなどを提供することが望ましい。
  • 5.5 色及び形
    • a) ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な情報は,色だけに依存して提供してはならない。
    • b) ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な情報は,形又は位置だけに依存して提供してはならない。
    • c) 画像などの背景色と前景色とには,十分なコントラストを取り,識別しやすい配色にすることが望ましい。
  • 5.6 文字
    • a) 文字のサイズ及びフォントは,必要に応じ利用者が変更できるようにしなくてはならない。
    • b) フォントを指定するとき,サイズ及び書体を考慮し読みやすいフォントを指定することが望ましい。
    • c) フォントの色には,背景色などを考慮し見やすい色を指定することが望ましい。
  • 5.7 音
    • a) 自動的に音を再生しないことが望ましい。自動的に再生する場合には,再生していることを明示しなければならない。
    • b) 音は,利用者が出力を制御できることが望ましい。
  • 5.8 速度
    • a) 変化又は移動する画像又はテキストは,その速度,色彩・輝度の変化などに注意して作成することが望ましい。
    • b) 早い周期での画面の点滅を避けなければならない。
  • 5.9 言語
    • a) 言語が指定できるときは,自然言語に対応した言語コードを記述しなければならない。
    • b) 日本語のページでは,想定する利用者にとって理解しづらいと考えられる外国語は,多用しないことが望ましい。使用するときは,初めて記載する時に解説しなければならない。
    • c) 省略語,専門用語,流行語,俗語などの想定する利用者にとって理解しにくいと考えられる用語は,多用しないことが望ましい。使用するときは,初めて記載されるときに定義しなければならない。
    • d) 想定する利用者にとって読みの難しいと考えられる言葉(固有名詞など)は,多用しないことが望ましい。使用するときは,初めて記載されるときに読みを明示しなければならない。
    • e) 表現のために単語の途中にスペース又は改行を入れてはならない。
    • f) ウェブコンテンツは,文章だけではなく,分かりやすい図記号,イラストレーション,音声などを合わせて用いることが望ましい。

各項目の理解を助けるために,個別要件の項目ごとに例や参考を付記してある.また,付属書1として,具体的な例示を多数収録してある.

JIS X 8341-3 6章: 情報アクセシビリティの確保・向上に関する全般的要件

企画から保守・運用に至る(全般的な)プロセスにおいて配慮すべき個別的な要件を規定.主として運用管理・運用担当者を対象.

  • 6.1 企画・制作に関する要件
  • 6.2 保守及び運用に関する要件
  • 6.3 検証に関する要件
  • 6.4 フィードバックに関する要件
  • 6.5 サポートに関する要件

Content of WCAG 2.0 WD

  • Introduction
  • Overview of Design Principles
  • Principle 1: Content must be perceivable
    • Guideline 1.1 Provide text alternatives for all non-text content.
    • Guideline 1.2 Provide synchronized alternatives for multimedia.
    • Guideline 1.3 Ensure that information, functionality, and structure are separable from presentation.
    • Guideline 1.4 Make it easy to distinguish foreground information from background images or sounds.
  • Principle 2: Interface elements in the content must be operable
    • Guideline 2.1 Make all functionality operable via a keyboard or a keyboard interface.
    • Guideline 2.2 Allow users to control time limits on their reading or interaction.
    • Guideline 2.3 Allow users to avoid content that could cause photosensitive epileptic seizures.
    • Guideline 2.4 Provide mechanisms to help users find content, orient themselves within it, and navigate through it.
    • Guideline 2.5 Help users avoid mistakes and make it easy to correct them.
  • Principle 3: Content and controls must be understandable
    • Guideline 3.1 Ensure that the meaning of content can be determined.
    • Guideline 3.2 Organize content consistently from "page to page" and make interactive components behave in predictable ways.
  • Principle 4: Content must be robust enough to work with current and future technologies
    • Guideline 4.1 Use technologies according to specification.
    • Guideline 4.2 Ensure that user interfaces are accessible or provide an accessible alternative(s).
  • Appendices