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1年次演習補助教材「誰のためのデザイン」

Tue Apr 25 22:40:31 JST 2006
渡辺隆行
http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/lec/

目次

1 はじめに

「誰のためのデザイン?」,D.A.ノーマン著,野島訳,新曜社.

1.1 使いやすい機器を作るためのデザイン

このテキストは、認知科学者でHCI(Human-Computer Interaction)の専門家でもある著者が、「使いやすい機器を作るためのデザイン」について述べた本です.その背景について,テキストの序章を元に少しお話します.

この本は,「人が間違うのは,機器のデザインが悪いからだ.だから,人間中心の,機器を使うユーザの立場に立ったデザインが必要だ.」ということを,具体的な例を挙げてわかりやすく書いてあります.

1.2 目次

誰のためのデザイン?(The Design of Everyday Things)

  1. 毎日使う道具の精神病理学
  2. 日常場面における行為の心理学
  3. 頭の中の知識と外界にある知識
  4. 何をするかを知る
  5. 誤るは人の常
  6. デザインという困難な課題
  7. ユーザ中心のデザイン

2 1章のまとめ

2.1 「日用品の精神病理学」

われわれの回りには使いにくい製品があふれている.どうすればこの状況を変えられるだろうか?

2.2 よいデザインに必要なもの

  1. 使い方を示す可視的な手がかり(visible clue),可視性(visibility).どこを押せばドアが空くのかはドアのデザインによって示されるべき(図1-2).デザインにより,使い方が自然にわかる.
  2. やりたいこととできそうなことの間に自然な対応付け(natural mapping).ハンドルは回すことをaffordし,右に回せば車が右に曲がるのは自然な対応付け(図1-3,1-13).
  3. 操作の結果が見えること(feedback).
  4. よい概念モデル(conceptual models).利用者は概念モデルを使って自分の行為の結果を予測するので,よい概念モデルを利用者に与える必要がある.概念モデルがない場合は闇雲に試してみるしかない.

アフォーダンス(affordance):物の知覚された又は現実の特性,特にその物がどのように使用されうるかを決定する基本的な特性.アフォーダンスによって,物をどう扱えばよいかの手がかりが与えられる.見ただけでどう使えばよいかわかる.(図1-5,1-6)単純なものにラベルや説明や図が必要ならば,デザインが悪い.

概念モデル(conceptual models):物がどのように機能するかの頭の中でのシミュレーション(図1-7).「アフォーダンス」と「制約(constraints)」と「対応付け」は更なる手がかりを与える(例:はさみ).概念モデルはメンタルモデルの一部.メンタルモデルは自分自身や他者や環境や使用する物に対して持つモデル.経験や訓練や指示を通してメンタルモデルは構築される.道具のメンタルモデルは,知覚された道具の動作と見た目の構造によって形作られる(図1-8).

概念モデルはメンタルモデルの一部:デザイナが持つ「デザインモデル」,システムを利用することで生じる利用者の「ユーザモデル」,システム(物)が実際に持っていてユーザに示す「システムイメージ」(図1-10).ユーザモデルとデザインモデルが同じならばよいが,ユーザはシステムモデルを通じてユーザモデルを構築する.

2.3 デザイナの仕事

技術が進歩したおかげで人生は容易になり楽しくなった.しかし同時に世の中は複雑になってしまった.技術の登場期には複雑で使いにくいが,技術が成熟すると使いやすくなる.その市場が広がると新参者が新しい機能を引っさげてやってくるので機能がてんてこ盛りの複雑な装置になってしまう.

機能が増え,サイズが小さくなると対応付けや可視性を与えることが難しくなる.製造コストも考えなければならない.しかし,上記のポイントを知って上手にデザインすれば複雑で使いにくい製品になることは避けられる.

(認知心理学,人間工学,ユーザビリティ工学などが重要になる)

3 2章「日常行為の心理学」

3.1 人は間違いを犯す生き物

人間は,デザインが悪いせいで操作を誤っても,自分を責めてしまう.人はエラーを犯す(error prone)生き物である.だからデザイナーは,利用者がエラーしても損害を与えないように配慮すべき.(例;元に戻す機能の追加)

人間は思い違いを犯す.自然界の出来事に対する素朴(naive)な見方は,実際は間違っているにしても,もっともらしく見える.(図2-1)人はわからないことでも説明をつけようとし,素朴な見方で理解する.

人間は,自分が見聞きした事を説明するためにメンタルモデル(物事や人の振る舞いを説明する概念モデル)を作る.メンタルモデルがあるおかげで予期しない事態にも対応できるが,素朴な見方による思い込みに基づく間違ったモデルが形成されることもある.デザインが悪いと誤ったメンタルモデルが形成されてしまう.

何かをしようとして失敗すると,失敗する前に行っていた操作が失敗の原因であると思い込むこともある.人間は,技術側の原因で失敗しても自分のせいだと思い勝ちなので,本当の原因に気づくことはない.

何回も同じ失敗をすると自分を責めて「学習された無力感」に囚われる.デザインが悪い場合でも自分だけが間違うのだと思い込んでしまう.

失敗の原因を間違って解釈したために大きな事故が発生することがある.

3.2 デザインの助けとしての行為の7段階理論

図2-2〜2-5

何かタスクをおこなうときは,そのゴールに向かって何かをしたいという意図がある.その意図に基づいて実際の行為を行う.そして行為の結果を評価する.外界状況の知覚->知覚の解釈->解釈の評価->ゴール->意図->意図に基づく行為系列の形成->実行

  1. ゴール:暗くなってきたので部屋を明るくしたい.
  2. 意図:蛍光灯をつけよう.
  3. 行為:蛍光灯スタンドのスイッチを入れる.(行為の詳細化:腕を伸ばして,指をスイッチの位置に合わせて,適切な力でスイッチを押す.)
  4. (行為の結果,外界に変化が生じるはず)
  5. 知覚:明るくなった.
  6. 理解:蛍光灯がついたから明るくなったのだ.
  7. 評価:意図通り蛍光灯がついたからゴールが達成された.

行為の7段階理論(図2-5):ゴールの形成,実行過程(意図の形成,行為の詳細化,行為の実行),評価過程(外界状況の知覚,外界状況の解釈,結果の評価)

対応付けとフィードバックが不十分だと,各段階で問題が生じる.

実行過程でのへだだり:ユーザの意図とシステムで実際にできることのギャップ.

評価過程でのへだだり:システムの状態がわかりにくく,期待通りの動作をしない.

行為の7段階理論に基づくデザインのチェックリスト(図2-7)
  1. システムの状態を知覚できるデザインになっているか?
  2. 知覚されたシステムの状態とユーザの解釈の間によい対応付けができているか?
  3. システムが状態期待通りの状態であると評価できるようなデザインになっているか?
  4. 装置の機能がすぐにわかるデザインか?
  5. どんな操作が可能かわかるデザインになっているか?
  6. ユーザの意図と実際の動作によい対応付けができるデザインか?
  7. 意図した行為を実行できるか?
よいデザインの原則
可視性
使い方を示す可視的な手がかり(visible clue)がデザインによって自然にわかる.
よい概念モデル
ユーザがよい概念モデルを形成できるようなデザイン.操作と結果の間に一貫性があり,一貫して一致したシステムイメージを提供するデザイン.
適切な対応付け
行為と結果,システムの状態と目に見えるものの間に自然な対応付けがある.
フィードバック
どのような行為(action)が実際に実行され,どのような結果が生じたかをユーザに知らせる.

4 3章「頭の中にある知識と外界にある知識」

人の知識や記憶は誤りがち.キーの位置を覚えていなくても,正確にタイプできる理由:

タスクを達成するときに必要とされる頭の中の知識量と外界の知識量の間にはトレードオフの関係がある.タイプの練習を積めば頭の中の知識は必要なくなる.また,それぞれに利点と欠点がある.

人間は2種類の知識,ofの知識(事実や規則などのdeclarative知識,文章化が容易で教えるのも容易い)とhowの知識(手続きの知識,無意識で行われる身体的な知識のことかな?),を持っている.

4.1 記憶

短期記憶(短期間,現在の情報を5-7個程度記憶できる)と長期記憶(過去に関する記憶.100MB?程度の大容量.思い出す必要がある.).

長期記憶の検索カテゴリー:

...

思い出すこと

自然な対応付けの例:ガスレンジのつまみとバーナーの位置の対応(図3-3)

5 4章「何をするかを知る」

制約とアフォーダンス,対応付け

可視性とフィードバック

6 5章「誤るは人の常」

2種類のエラー:ミステイク(意識的によく考えているのに誤ってしまう.ゴールの設定間違い.)とスリップ(自動化された行為で生じる誤り.適切なゴールを形成できたのに行為の段階で誤った.)

作業の構造

エラーに備えたデザインの重要性

7 6章の「デザインという困難な課題」

8 7章「ユーザ中心のデザイン」