授業の概要
情報通信技術(特にインターネット)と人間の関わりという観点から,人間科学科の学生の出発点となる授業をおこなう.まず,インターネットを支える技術について簡単に解説し,ウェブや電子メールの仕組みと活用法を理解する.次に,ヒューマン・コンピュータ・インターラクションとユーザビリティについて解説し,人間科学科で学ぶ諸授業との関連を指摘する.これらの授業を通じて,情報通信技術の活用法と人間を幸せにする技術について考える.
はじめに
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- 自己紹介⇒この授業の背景
- 授業概要
- 参考文献
- ノートPC利用
- この授業で学びたいこと?
- 宿題:以下3項目を自分なりに考えて,それぞれA4 0.5から1ページ相当のメモにまとめる.(次回発表)
- 文系の友達に「コンピュータって何?」と聞かれたらなんと答えるか?
- 「コンピュータと人間の比較」コンピュータと人間の特徴をそれぞれ考えてから比較すると作業しやすいと思う.
- あなたは,コンピュータのどこが苦手か? or 得意なので困ることはないか?
情報通信技術と人間の関わり
コンピュータとは何か?
- 技術的な説明:
- 電子計算機.つまり,電気で動く,計算をする機械.
- コンピュータとは、プログラムに従って演算を行う機械の総称。(IT用語辞典)
コンピュータはハードウェアとソフトウェアからなる.ハードウェアは,文字通り機械(電子機器)のことで,入力装置,出力装置,記憶装置,演算装置と制御装置(まとめてCPU)の5つの構成要素からなる.ソフトウェアは,文字通り手にとって触ることができないプログラム(ソフトウェア)のことで,オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションに分けることができる.(配付資料参照)
CPUは,ソフトウェアに示された命令の通りに動作して,キーボードからのデータ入力を受け付け,データを処理し,画面やプリンタなどい処理した結果を出力する.ソフトウェアも処理途中のデータも記憶装置に記憶されている.また最近のコンピュータはネットワークによって他のコンピュータとつながっており,データを転送することができる.コンピュータには,パソコンやスーパーコンピュータだけではなく,携帯電話や車などに組み込まれた(利用者の目には見えないところで働いている)コンピュータもある.
- 文系の学生に適した説明:
- ?
コンピュータが我々の生活に及ぼす影響や利便性だけに焦点を当てて説明するとコンピュータの本質を見落とす可能性があります.しかし,コンピュータの原理や機能だけに焦点を当てて説明しても,我々の生活に深く入り込んでいるコンピュータについて説明し切れていないこともわかります.また,我々は実はコンピュータについてよく知らないし,知らないでも使えているということもわかると思います.
コンピュータと人間の特徴と比較
これまでの受講生の宿題をまとめた結果に,「アラン・クーパー著,山形浩生訳『コンピュータは,むずかしすぎて使えない!』翔泳社」に掲載されている表や「安西祐一郎『心と脳-認知科学入門-』岩波新書」なども参考にして追加.
| コンピュータ | 人間 | |
|---|---|---|
| デジタル | アナログ | |
| 構成要素に注目 | ||
| 頭脳(演算・制御) | CPU(半導体回路の集積) | 脳(ニューロンのネットワーク) |
| 記憶 | 電子回路に記録 | 脳に記憶(短期記憶と長期記憶) |
| 入力 | キーボード,マウス,ネットワークなど | 感覚器官,5つの知覚 |
| 出力 | 画面,プリンタ,ネットワークなど | 発話,表情,身振りなど |
| 通信 | 世界中のコンピュータが相互接続 | コミュニケーション(対話,印刷メディアなど) |
| 能力に注目 | ||
| 処理速度(計算能力) | とても高速 | とても低速 |
| 正確さ | エラーなし | エラーだらけ |
| 記憶 | 巨大容量,永久保持,迅速アクセス | 容量に制限,忘れる |
| 持続能力 | 永遠?に疲労しない | 短時間で疲れる,飽きる. |
| 処理の仕方 | 順番に処理 | ランダムに処理 |
| 繁殖 | 不可能 | 可能(両親の遺伝子を受け継ぐ) |
| 運動 | ロボットなら動ける | オリンピック選手のような巧妙な運動も可能 |
| 心に注目 | ||
| 心 | (今のところ)なし | あり(脳のなか?) |
| 言語とコミュニケーション | ネットワークで世界中のコンピュータがつながっている | 赤ちゃんは言葉を獲得.人間は他者と共感し豊かなコミュニケーション |
| 学習 | 機械的・プログラム的な学習 | 自ら学び成長 |
| 思考 | 形式化された推論ならできる | 知識や経験から学ぶことができる |
| 感情 | (今のところ)感情はない | 感動!,時に感情に支配される |
| 意志 | (今のところ)意志はない | 意志を持つ |
| 理解・判断 | プログラムの指示通りに動作 | 個人の知識や経験に基づき理解・判断 |
| 道徳 | 道徳無視 | 論理的 |
| 発達・成長 | しない | する |
| 行動原理 | 予測可能(決定論的行動) | 予測不能(不合理) |
| 融通さ・(環境への)適応力・従順さ | 文字通り解釈・適応しない | 察することができる・適応できる |
| 知性・創造性 | (今のところ)知性や創造性はあまり感じない | 知的・創造性 |
| 社会性 | ない | 他者との関係なしに生きていけない |
| そのほか | ||
| 使用言語 | 二進数(C++,Java,...) | 自然言語(日本語,英語,...) |
| エネルギー源 | 電気 | 炭水化物など |
| 寿命 | 数年? 永久? | 100年弱 |
| 個体差・個性 | ほぼなし | 多様 |
| 命 | 持たない | 持つ |
この表を見ると,コンピュータと人間の大きな違いは,「コンピュータは機械であり心を持たないが,人間は生物であり心を持つ」とまとめることができそうな気がします.また,コンピュータはデジタルな情報処理が得意で人間はアナログな情報処理が得意なこともわかります.
心とは何か?
人間を特徴付けているように見える「心」とは何でしょうか? 古来,多くの賢人達が「心とは何か?」について悩み,考え,宗教や哲学として発展してきました.コンピュータが存在しなかった時代は,人間と動物を区別する存在として心を捉えていました.また,心は心臓に存在すると考えていたこともありました.
その後,「我思う、ゆえに我あり」と看破したデカルト,理性を持つはずの人間の非合理的な行動を精神分析で解明しようとしたフロイト,人間の行動を観察することで科学的に心を学問しようとした行動主義心理学に続き,脳の動きとして心を捉える(科学する)認知心理学が生まれました.
認知心理学は,人間の認知(知覚,記憶,思考など,人間の心の働きや意識のこと)を,コンピュータの情報処理になぞらえてモデル化することで発達した部分があります.コンピュータのCPUに対応するのが人間の脳で,脳の情報処理の過程として人間の認知を学問しようとしています.この方向性がもっとはっきり表れるのが認知科学(Cognitive Science)で,心を科学的に究明しよう,知性を分析しようという学問分野です.
コンピュータのソフトウェアとハードウェア,さらにはハードウェアの5大機能(入出力,記憶,演算・制御)に対応する人間の要素や機能を考えてみると,両者の比較がしやすいかもしれません.コンピュータのハードウェアに相当するのが人間の身体でソフトウェアに相当するのが心と考えるのは,デカルトの「心身二元論」に通じます.両者とも入力機能,出力機能,記憶機能,計算機能,通信機能を持つけれども,機械であるコンピュータと生物である人間では,その機能の特徴がかなり異なっていると考えるわけです.
...
ここから少し話の方向性が変ります.デカルトより少し先に生まれた哲学者であるホッブスは,「心とは計算することである」と主張しました.つまり,心もまた計算機であると考えたのです.(ここで言う計算は四則演算だけではなく,記号と記号を一定の規則に従って結びつける操作も含んでいることに注意.翻訳とか質疑応答は記号処理のイメージに近いかも知れません.)
この考えは,人工知能の可能性を示唆します.考えること(心)が計算ならばコンピュータも考えることができ,心を持つかも知れないわけです.1950年代後半から1980年代にかけて人工知能の開発が活発に行われましたが,人間と同じような知能はまだ実現していません.人工知能の研究は多くの挫折を味わいましたが同時に人間の知能とは何か,意識とは何か,心とは何かに関して多くの知見を与えています.
人間とコンピュータのコミュニケーション
人間がコンピュータにデータや命令(プログラム)を入力し,コンピュータがそれを処理(計算)し,その結果を人間に伝えることを人間とコンピュータのコミュニケーションと捉えることもできます.デジタルなコンピュータとアナログな人間の間には界面(境界,インタフェース)があるので,人間がコンピュータに接する部分をユーザ・インタフェースと言います.コンピュータの入力装置であるキーボード・マウス・マイク(音声入力)や,出力装置であるディスプレイやスピーカがインタフェース装置です.インタフェースの設計(デザイン)が優れていれば使いやすいだろうし,設計が悪ければ使いにくいだろうことは容易に想像できると思います.
インタフェース(境界)という言い方は静的なイメージを与えます.実際は,人間がコンピュータに入力し,結果の出力を受け取り,さらにそれを元に別の入力をし,,,というように人間のコンピュータ利用はもっとダイナミックな動きです.これをインタラクションといいます.ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(Human-Computer Interaction,HCI)という言葉はこのことを示しています.
コンピュータのどこが苦手か?
受講生の回答をまとめてみました.
- ハードウェア関係:
- すぐにフリーズする.
- 予告なく,急に強制終了させられる.
- 故障しても自分では直せない.
- 壊れやすいので気を遣う.
- 記録装置が故障すると(大量の)データを(一瞬で)失う.
- ネットワーク接続が急に悪く(遅く)なる.
- 重たいソフトを動かしたり複数のソフトを立ち上げたりするなどによって,動作が極端に遅くなる.
- (Windows Updateがバックグラウンドで動作していたり,ハードディスクのアクセスが集中していたり,ウイルス検索ソフトが活発に動いたりしている場合もあるが,いずれにしても利用者には理由がわからないまま)急に動作が遅くなる.
- 画面表示などの動作が遅い.
- 水に弱い.
- カーソルが勝手に動く.
- キーボードにあるボタンの種類が多すぎて,使いこなせない.
- 付属品が複雑.
- セキュリティ関係:
- ウイルスや情報漏洩などの脅威が多い.
- コンピュータウイルスに注意しろと言われても形がないので実感がわかない.
- 悪質なサイトに気づかず飛んでしまうことがある.
- ウェブ上にあるどの情報が正しいのか判断できない.
- 「インストールしてください」というメッセージが出た際,インストールしても大丈夫なのか(信頼できるソフトなのか)心配になる.
- (知識不足で)意味不明・対応不能:
- 英語やカタカナ言葉が多いばかりではなく専門用語も多いので,説明を読んでもわからない.
- 使い方が不明なときにヘルプを見てもカタカナ言葉が多すぎて意味不明.(ヘルプを読めば解決方法がわかるという人もいる.)
- 説明書が厚く複雑.(逆に,最近のコンピュータにはきちんとした説明書が付いてこない.)
- (仕組みがよくわからないから,)不具合が生じても自分では解決できない.
- (用語やハード・ソフトに関する)ある程度の知識がないと使えない.
- アイコンなどのマークが多すぎて,何を意味しているのか不明.
- コンピュータやネットワークの初期設定が意味不明.
- エラーや意味不明の表示が出たときの対処方法がわからない.
- 機能が多すぎて,どれが何をするためのものかわからず,結局使いこなせない.
- その操作をするとどうなるかがわからないことが多い.(「はい/いいえ」の質問が出たときにどうすればよいのかわからない.)
- 操作関係:
- 仮名漢字変換中,勝手に英字入力やカタカナ入力に変わってしまう.
- 自分が入力したい漢字に変換してくれない.
- OSによって操作方法が異なる.
- 自分で字を書くよりもタイピングに時間がかかる.(タッチタイピングができるのでタイピングの問題は感じないという人もいる.)
- 意図したとおりに動いてくれない.融通が利かない.
- 操作を間違えても元に戻せないことがある.
- アプリケーション(ソフト)の使い方がわからない.
- 操作を間違えると,おかしくなる.
- ちょっと操作を間違えただけでデータが消える.
- 操作の手順(順番)を少し間違えただけで失敗する.
- 説明書の通りに設定や操作をしたはずなのにうまくいかない.
- 操作後の変化がわかりづらい.
- そのほか:
- 文字化けする.
- どこが悪いのか自分でしゃべってくれない.
- 融通が利かない.少しでも間違うとエラーになる.(最近のGoogle検索は,検索語の間違いを指摘してくれるので助かるという意見もある.)
- 苦手すぎて,どこが苦手か指摘できない.(初心者用のわかりやすい説明書が欲しい.)
- 他人に教えるのが難しい.
- 新しい機能が次々に追加される.
- アップデートや新機能や新ソフト追加などで,始終インストールさせられる.
- ポスター作成時など,手書きのように自由自在に描けない.
- 肩が凝る,ドライアイになる.
- Excelの計算式がわからない.
- 情報が多すぎて処理できない.
- コンピュータとコミュニケーションがとれない.
コンピュータが苦手な理由
結局,コンピュータと人間の本質的な違いは何でしょう? 技術が発展すればコンピュータ(ロボット,アンドロイド)は人間に近づくのでしょうか?
そうした疑問はさておき,我々が生きているこの時代では,両者にはまだまだ違いがあります.この違いを生み出している原因は何なのでしょうか? 同じところはないですか? 人間の方が優れている箇所はどれでコンピュータの方が優れている箇所はどこでしょうか?
人間とコンピュータの違いとその理由がわかれば,なぜコンピュータが扱いにくいか,苦手なのかの理由がわかると思います.また,コンピュータはどう改善されるべきかの方向性もわかるでしょう.コンピュータが発達して人間のような心を持てば使いやすくなるのか? 人間とコミュニケーションするためにはコンピュータにどのような機能が必要なのか? 今のコンピュータはそのような機能をまだ持たないが,どこを工夫すれば改善されるのでしょうか?
コンピュータより人間の方が優れている箇所や人間の方が得意な仕事があることに注意してください.コンピュータが得意な作業ではコンピュータを使い(being digital),人間の方が得意なことはコンピュータを使わない(being analog),その使い分けができることも重要なICTスキルです.
いくつかの例
ロボットとのコミュニケーション
人と人とのコミュニケーションにおける「うなずき」に注目し,それをロボットに実装した研究を紹介します:「となりの研究室訪問記/岡山県立大学 情報工学部 情報システム工学科 渡辺研究室:コミュニケーションにおける身体とロボット」.「うなずき君」
人工無能
人工知能ならぬ人工無能の例として「Eliza」を紹介します.mixiやTwitterにも人工無能が住んでいるのは知っていますか?
未来のコンピュータ
SF映画では未来のコンピュータが色々な形で描かれていますが,もっと近い未来,数年後に可能になるかもしれない技術を各社が公開しています.たとえば,Microsoftの「Productivity Future Vision」ここで紹介されているYouTube「Productivity Future Vision (2011) 」の他にも面白い動画が多数あります.
近未来のコンピュータ(一部は既に)は,Robot,Ubiquitous Computing,AR(Augumented Reality)として人間の世界に浸透していきそうな気がしませんか?
AR(拡張現実):現実環境にコンピュータを用いて情報を付加提示する技術、および情報を付加提示された環境そのものを指す言葉。(Wikipedia)
アナログとデジタル
人間はアナログでコンピュータはデジタルである例をひとつ取り上げます.
実技課題:アナログデータのデジタル化
アナログとデジタルに関する参考情報例:「アナログ」と「デジタル」,「アナログ情報とデジタル情報」など.
最近話題の地上デジタル放送も,これまでアナログデータで送信していた番組をデジタルデータで送信するという大転換です.
コンピュータは電気信号のON/OFF(つまり,二進数の1/0)でデータを示している(コンピュータの言語は二進数)なので,デジタルな機械ですが,人間は連続した値を扱えるのでアナログです.
文字について
アナログデータのデジタル化の例として上記課題をしましたが,「文字」はコンピュータと人間の関わりのおもしろさ・難しさを示す良い例なので,もう少し詳しく取り上げます.コンピュータができる前から人間は文字を使ってきました.その文字をコンピュータが取り扱うようにするには,いろいろなことを考える必要があったのです.
- 文字集合:僕の名前は戸籍には「渡邉」と書かれていますが,「辺」と「邊」と「邉」は同じ文字(字体)でしょうか? しんにょう(辶)にも一点しんにょうと二点しんにょうがありますが,両者は同じ部首ですか? 手書きの文字には鉛筆で書く文字もあれば毛筆で書く文字もあり,書道家の書く文字などは素人が読んでもわからないほど崩されている場合もあります(書体の違い).どの字と字は同じ文字と考えるべきで,どれは違うと考えるべきなのでしょうか? 人間が生活していくために必要な文字を集めて(似た字は同じ文字として)整理した物が文字集合です.
- グリフ(字形):文字集合に含めたある文字の形をグリフと言います.先週の課題で「あ」という文字を各自に書いてもらいましたが,各自でグリフを決めたわけです.同じ字でも違う字の形(グリフ)で書くこともできます.先週の課題のように字形をデジタル化することで,文字の形(フォント)をコンピュータに保存できるようになります.
- 文字コード:文字集合(符号化文字集合)をコンピュータで扱うためには,文字集合に納めた文字毎に固有の数字(コード)を割り当てる必要があり,これを文字コード(文字エンコーディングスキーム)と言います.日本語にはJISコード(ISO-2022-JP),シフトJIS(Shift_JIS),EUC-JPなど複数の文字コードがあり,文字をコードに変換する際のルール(文字コード)と,変換された文字コードを文字に戻す際のルール(文字コード)が異なると,いわゆる文字化けを起こすことになります.
代表的な英字の文字コード:0(0011 0000),1(0011 0001),....,A(0100 0001), B(0100 0010),....,a(0110 0001),.... - Unicode:韓国や中国の人とメールのやり取りをしたことはありませんか? 本文は英語で書いても,メールの差出人は「渡辺隆行 <nabe@xx.yyy.zzzzz.jp>」のようにその国の文字で書いてあるために文字化けしてしまって読めなかったことはあありませんか? 日本と中国と韓国(ハングル以前)には共通する文字が多いのに文字化けしたり表示できなかったりするのは,各国で用いている文字コードが異なるからです.世界中の文字を集めて(世界共通の文字集合を作る),世界共通の文字コードを決めたら,このような文字化けはなくなります.そのような背景で作成されたのがUnicodeです.僕がウェブページを書くときは,Unicode(のUTF-8という種類の文字コード)を使います.しかし,日本と中国と韓国のように同じ漢字文化圏であっても,それぞれの国で用いられる字体は微妙に異なります.Unicodeはそういう異なる字体も同じ文字としてまとめてしまったので,Unicodeを使うことに異論を唱える人もいます.
この授業の目標
どうすれば人間様が使いやすいコンピュータ,さらには情報通信技術ができるのか,それをこの授業で考えてみたいと思います.「情報通信技術と人間の関わり」という授業題目は,このことを示しています.
人間
この章は,人間側の基礎知識を身につけることが目的です.人間編では,まず,情報通信システムを利用するユーザである人間の特徴を,認知心理学(認知科学)と人間工学に焦点を当ててお話しします.(ここでは,認知心理学や人間工学のごく一部しか扱っていないことに注意.)
認知心理学(認知科学)
ここでは,コンピュータの1種として人間をとらえることで人間の情報処理の過程を明らかにする考え方を紹介します.つまり,外界の情報が人間に入力され,認知過程で情報処理されて,出力されるという見方です.人間の情報処理過程に焦点を当てて考えると,以下のプロセスで表現できます.
- 知覚システム:視覚・聴覚・触角などの知覚プロセッサが,それぞれ得た知覚情報を処理し,視覚イメージストアや聴覚イメージストアなどに一時的に情報を蓄える.
- 認知システム:イメージストアに蓄えた情報の意味を解釈する.処理した情報は短期記憶や長期記憶に記憶される.また,意味の理解や判断なども行われる.
- 運動システム:認知システムの処理の結果,意図をもって外界に働きかける.
知覚
外界の物理的刺激を感覚器で受容し,中枢神経系で処理された結果,意識にのぼる過程(perception)または意識される内容(percept)を指す.視覚を例にとると,網膜の光受容細胞で受容された視覚情報は,外側膝状体を経て,大脳皮質へ至る.大脳皮質における情報処理の結果,眼前にある世界を意識体験する過程が知覚過程でありその内容が知覚である.知覚は,脳が情報処理の結果生み出したものであり,外界世界の単なるレプリカではない.それは,例えば,光情報を受けているのが網膜の一平面上に並んだ光感受性細胞であるにもかかわらず,明確な立体感を伴って世界を見ることからも明らかである.
(日本認知科学会編:「デジタル認知科学辞典(初版)」共立出版)
- 視覚:
- 明るさ,色,形,文字が読める,...
- 聴覚:
- 大きさ(ラウドネス),高さ(ピッチ),可聴周波数,言葉として聞こえる,..
- 触覚(皮膚感覚):
- 形,...
- そのほか:
- 味覚や嗅覚なども知覚
知覚に関する面白い話題として,2011年10月29日にNHKで放映された"五感の迷宮「脳が作る錯覚の世界」"を紹介します.
記憶と理解
- 感覚記憶:視覚は数百ミリ秒,聴覚は数秒間保持できる.「ホッタイモイジルナ!」,「しらんぷり」
- 短期記憶:15から30秒間は保持できる.7チャンクの情報しか記憶できない.
- 長期記憶:ほぼ永久に忘れない.
外界の情報を知覚し記憶しても,理解できなかったらその情報を利用できない.また,理解しにくかったり間違いやすい情報はエラー(誤解.間違い)を引き起こす.
認知心理学(認知科学)は通年で学ぶべき科目ですので紹介はここで終わって,次節からは,ヒューマン・コンピュータ・インターラクションの見地から見た人間の認知と行動に関するわかりやすい話題として,「アフォーダンス」,「行為の7段階理論」,「ヒューマン・エラー」を紹介します.
アフォーダンス
『アフォーダンス -新しい認知の理論』(佐々木正人著,岩波書店)から,知覚心理学者のJ.J.Gibsonが提唱した「アフォーダンス」という概念を紹介します.興味を持った人はこの本を読んでください.
「人間編」の冒頭で,「コンピュータの1種として人間をとらえることで人間の情報処理の過程を明らかにする考え方」を紹介しました.これは,知覚システムが感覚器に受けた刺激を処理し,認知システム(脳)がその情報の意味を解釈するモデルです.コンピュータで言うと,カメラが外界を撮影し,画像データとして外界のイメージを記録します.コンピュータはその画像データを分析して,画像データに含まれている情報を抽出することに相当します.
しかし,人間の認知過程は本当にこのようになっているのでしょうか? 高度な人工知能を持ったロボットは,高性能なカメラと高性能なCPUを持っていれば,カメラに写ったデータを処理して,人間のように行動できるのでしょうか? ロボットを取り巻く世界(環境)にはありとあらゆる情報があふれています.人工知能を持ったロボットは,それらの情報をすべて処理して,何が自分の行動を妨げ,何は関係しないのかをすべて判断しなければ,一歩たりとも足を踏み出すことができません.でも人間なら,環境の何が自分に関係していて何は関係しないのかを一瞬のうちに判断して,関係ないことは無視して行動しています.
このような背景から,Gibsonは,人間の認知を説明する新しい理論を提唱しました.Gibsonは,情報は,刺激が脳で処理された結果生み出される物ではなくて,外界(環境)そのものにあると考えました.知覚は,外界にある情報を直接手に入れる活動である.環境には「持続と変化」という情報があり,人間はその情報を知覚していると考えたわけです.
コネチカット大学のウイリアム・ウォーレンは,スライドで壁にさまざまな高さのバーを投影して,どの高さなら「手や膝をつかずに脚だけで登れる」かを視覚的に判断させた.平均身長160cmのグループも,190cmのグループも,ぎりぎりで登れると判断した高さは,知覚者の股下の長さの0.88倍のところだった.(『アフォーダンス』,p58)
このほかにも「肩を回さなければ通り抜けられない隙間の幅」,「手を使わずに座れる椅子の高さ」,「またぐことができないバーの高さ」などのいろいろな値が,環境を知覚している人間の身体の大きさを基準にしていることがわかっています.
これらの値が「アフォーダンス」です.「アフォーダンス(affordance)」は,環境が人間に提供する価値というか環境の性質を示します.「この石は投げることができる」,「この石には腰掛けることができる」という「石のアフォーダンス」は,石自体の物理的性質ではありません.人間が石に見いだす情報(環境の性質)です.
「アフォーダンス」という概念は,人間とコンピュータの(情報処理の)違いを表している点で興味深いだけでなく,「使いやすいデザイン」を考える上でも重要です.ドアのデザインが「引いて開くドア」をアフォードしていたら,間違ってドアを押してしまうことはなくなるでしょう.Webページの画像が「クリックできる画像」と「クリックできない画像」を正しくアフォードしていたら,どこをクリックするべきかわからなかったり,間違って画像をクリックしてしまったりすることはないでしょう.マニュアルや説明書きを読まなくても,デザインがアフォードしていれば,ユーザである人間はその情報を読み取って正しく取り扱えるのです.
行為の7段階理論
人間は,単に知覚して理解して操作しているだけではありません.情報通信機器(製品)を使うユーザは,意図を持って行動しています.ユーザは,行動の結果を評価して,やり直したり別の行為に移ったりしています.この人間の「行為」全体に焦点を当てたモデルが,D.A.Normanの「行為の7段階理論」です.以下,『誰のためのデザイン?』(D.A.ノーマン著,野島訳.新曜社)から要点をピックアップします.
何かタスクをおこなうときは,そのゴールに向かって何かをしたいという意図がある.その意図に基づいて実際の行為を行う.そして行為の結果を評価する.
外界状況の知覚->知覚の解釈->解釈の評価->ゴール->意図->意図に基づく行為系列の形成->実行
- ゴール:暗くなってきたので部屋を明るくしたい.
- 意図:蛍光灯をつけよう.
- 行為:蛍光灯スタンドのスイッチを入れる.(行為の詳細化:腕を伸ばして,指をスイッチの位置に合わせて,適切な力でスイッチを押す.)
- (行為の結果,外界に変化が生じるはず)
- 知覚:明るくなった.
- 理解:蛍光灯がついたから明るくなったのだ.
- 評価:意図通り蛍光灯がついたからゴールが達成された.
「行為の7段階理論」を使うと,ユーザである人間がまずゴール(したいこと,目標)を形成し,次にそれを実行(意図の形成,行為の詳細化,行為の実行)し,最後に評価(外界状況の知覚,外界状況の解釈,結果の評価)するサイクルを繰り返していることがわかります.
- システムの状態を知覚できるデザインになっているか?
- 知覚されたシステムの状態とユーザの解釈の間によい対応付けができているか?
- システムが期待通りの状態であると評価できるようなデザインになっているか?
- 装置の機能がすぐにわかるデザインか?
- どんな操作が可能かわかるデザインになっているか?
- ユーザの意図と実際の動作によい対応付けができるデザインか?
- 意図した行為を実行できるか?
- 可視性
- 使い方を示可視的な手がかり(visible clue)がデザインによって自然にわかる.
- よい概念モデル
- ユーザがよい概念モデルを形成できるようなデザイン.操作と結果の間に一貫性があり,一貫して一致したシステムイメージを提供するデザイン.
- 適切な対応付け
- 行為と結果,システムの状態と目に見えるものの間に自然な対応付けがある.
- フィードバック
- どのような行為(action)が実際に実行され,どのような結果が生じたかをユーザに知らせる.
ヒューマン・エラー
"To err is human, to forgive divine(誤るは人の常,許すは神の業)"という言葉を聞いたことがあるでしょう.人間とコンピュータの比較でも,コンピュータは間違えないが人間はしょっちゅう間違えるという違いが指摘されました.そこで同じくNormanの『誰のためのデザイン?』から,「(アクション)スリップ」を紹介します.
人間のエラーは二つのカテゴリーに分類できる:スリップ(自動化された行為で生じる誤り.適切なゴールを形成できたのに行為の段階で誤った.)とミステイク(意識的によく考えているのに誤ってしまう.ゴールの設定間違い.)
- スリップの例
- 遊びに出かけるつもりが,気づいたら大学に行くいつもの駅に向かっていた.
- 同じ形のボタンが並んでいるWebページで間違ったボタンを押してしまった.
- PCで不要な画像ファイルを複数消しているとき,間違って必要なファイルまで消してしまう.PCは「このファイルを消していいですか?」と聞いているにもかかわらず,「はい」をクリックしてしまった.
- 買いたい物があってコンビニまで出かけたのだが何が欲しかったのか忘れてしまった.
- 言い間違い,言った本人は言葉を間違えていることに気づいていないので,何回聞き直しても要領を得ない.
コンピュータは「スリップ」間違いを犯しません.でも,コンピュータに与えた人間の命令が間違っていたら,「ミステイク」を犯すかもしれません.ユーザである人間は「スリップ」間違いを犯す生き物であるので,このような間違いを防ぐデザイン,間違いが生じたときでも致命的にならないデザイン,間違いを正すことが容易なデザインが必要であることがわかると思います.
人間工学
人間の指では押せないほどキーボードが重たかったら,キー同士の感覚が適切でなかったら,人間は操作できません.マウスでクリックするボタンが小さすぎたら,複数のボタンの間隔が適切でなかったら,(特に高齢者や子供は)クリックできません.ドアが重すぎたら(女性や子供や車椅子の人は)開けることができません.それゆえ,操作する人間の身体的な特徴や物理的特性に焦点をあてた「人間工学」の知識が必要になります.以下,例をふたつだけ挙げます.
色のコントラスト比
背景色や背景画像が邪魔をして文字が読みにくいWebサイトに出会ったことはないですか? 高齢になったり弱視であったりすると,この読みにくさが増します.どのような色の組み合わせが良くないのでしょうか? 暗い背景色と明るい文字色や明るい背景色と暗い文字色が読みやすくて,明るい背景色と明るい文字色,あるいは暗い背景色と暗い文字色の組み合わせが読みにくいことがわかると思います.つまり,文字色(前景色)と背景色のコントラスト比が十分にないと,文字を読みにくいのです.(極端な場合,白地に白色の文字や黒地に黒色の文字は全く読めないですよね.)
Webコンテンツのアクセシビリティ・ガイドライン(WCAG 2.0)では,(明るい方の色の相対輝度+0.05)と(暗い方の色の相対輝度+0.05)の比を4.5対1以上にすることを求めています.また,富士通の「ColorSelector」という無料のツールを使うと,前景色と背景色の組み合わせが一般ユーザや障害者に見やすいかどうかを簡単に判定してくれます.
Fittsの法則
僕は小さなコンピュータが好きなのですが,小さな画面の小さなボタンをタッチペンでクリックするのが,だんだん苦手になってきました.普通のコンピュータの画面でも,ボタンやリンクが小さいとクリックに失敗します.また,遠くにあるメニューをマウスで選択するのは時間がかかるので,個人的にはMac OS Xの画面デザインは余り好きではありません(Mac OS Xでメニューを使うときは,画面を見ずに一気に画面の上端までマウスを持っていけばよいのですが,使い慣れていないので,画面上端に正確に合わせようとしてしまうのです.).Fittsの法則は,画面上で,マウスなどのポインティング・デバイスを使って,もの(ターゲット)を指し示すときにどれくらいの時間がかかるかを予測するモデルです.Fittsの法則では,ターゲットに移動する時間は,「ポインターが今ある位置とターゲットとの距離」と「ターゲットの大きさ」の比に依存することがわかっています.つまり,ターゲットであるボタンが大きければ,ターゲットまでの距離が遠くても,ポインティングする時間は変らないことを予測できます.
Fittsの法則から話がずれますが,下記2行のリンク群はどちらの方が使いやすいですか?
ユニバーサルデザイン,ユーザビリティ,アクセシビリティ
人間の仕組みの次は,さまざまなユーザ(健康な成人男子,女性,子供,高齢者,障害者,外国人)に焦点を当てて,ユニバーサルデザイン(なるべく多くの人が使えるようにデザインすること),ユーザビリティ(使いやすさ),アクセシビリティ(高齢者や障害者なども利用できること)について紹介します.
ユニバーサルデザイン
He coined the term "universal design" to describe the concept of designing all products and the built environment to be aesthetic and usable to the greatest extent possible by everyone, regardless of their age, ability, or status in life.
訳:すべての製品や建物を,年齢や能力や地位に関わらず,できるだけ多くの人にとって,美しくて使いやすく設計すること.
- UD7原則
- 誰にでも公平に使用できること
- 使う上での自由度が高いこと
- 簡単で直感的にわかる使用法となっていること
- 必要な情報がすぐ理解できること
- うっかりミスや危険につながらないデザインであること
- 無理な姿勢や強い力を必要とせず楽に使用できること
- 接近して使えるような寸法・空間となっていること
『ユニバーサルデザイン実践ガイドライン』(日本人間工学会編,共立出版)の表I-3-1「ユーザ分類表」では下記のように分類されています.
- 特別な配慮を必要としないユーザ
- 健康な成年男子などがここに該当しますね.
- 感覚機能に配慮すべきユーザ
- 視覚に頼れないユーザ
- 視力に配慮すべきユーザ
- 聴覚に頼れないユーザ
- 聴力に配慮すべきユーザ
- 運動機能や体格に配慮すべきユーザ
- 車椅子利用者
- 手が使えないユーザ
- 動作に配慮すべきユーザ
- 筋力の弱いユーザ
- 発話に配慮すべきユーザ
- 左利きユーザ
- 小さい/大きいユーザ
- 認知機能に配慮すべきユーザ
- 初心者/熟練者
- 理解が苦手なユーザ
- 日本語・外国語が読めないユーザ
- そのほか
- デモグラフィック(社会的)や文化的な差異に対して配慮すべき場合
ユーザビリティ
どんなに凝ったデザインの製品でも,使いにくければユーザは利用してくれません.「ユーザ中心の設計思想(Ucer Centered Design)」に立って,「ユーザビリティ(使いやすさ)」を考えることが重要です.
ISO 9241-11 "Ergonomic requirements for office work with visual display terminals. Part 11: Guidance on Usability"では,ユーザビリティを「特定のコンテキストにおいて,特定のユーザによって,ある製品が,特定の目標を達成するために用いられる際の,効果・効率・ユーザの満足度の度合い」と定義しています.つまりユーザビリティには,3つの下位概念があるわけです.
- 効果:ユーザが特定の目標を正確に完全に達成できること.
- 効率:効果を実現するために必要な資源が多いとか少ないとかいうこと.無駄がないこと.
- 満足:製品の使用に関して不快感が無くて肯定的な態度をもてること.
また,ヤコブ・ニールセンは,「ユーザビリティの特性」として5点を上げています.
- 学習しやすさ
- 効率性
- 記憶しやすさ
- エラー発生率
- 満足度
アクセシビリティ
高齢者や障害者をユーザとして考えると,ユーザビリティは必然的に「アクセシビリティ」につながっていきます.
アクセシビリティには明確な定義はありませんが,ユーザの中でも障害者(及び障害を持つ高齢者)に焦点を当て,製品利用の効率や満足度よりも,そもそもその製品を利用できるか(あるいは,どの程度利用できるか)どうかに焦点を当てています.また,障害者は車椅子やスクリーンリーダなどの支援技術を用いていることが多いので,それらの支援技術を使って利用できるか,という点にも焦点を当てています.
『Webアクセシビリティ~ 標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~』の「1章:Webアクセシビリティを理解する」では,下記のようにWebアクセシビリティを説明しています.
Webアクセシビリティとは、基本的には、障害者がWebを利用できることである。もっと具体的にいうと、Webアクセシビリティとは、障害者がWebを知覚し、理解し、ナビゲーション(訳注:広義には、Webサイトのページ間やページ内を移動したり見てまわったりすること)し、インターラクション(訳注:Webに入力したり情報を受け取ったりしてWebを利用)できることである。
障害者がWebを使っている例が,上記の本の「第1章:第1節:Webアクセシビリティとは何か?」に載っています.
『ユニバーサルデザイン実践ガイドライン』の「ユーザ分類表」にあるように,身体障害や知的障害など,様々な障害があります.また,「ユニバーサル・ウェブ」の「障害の分類」では,世界保健機関(WHO)の「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」の詳細な分類を紹介しています.
高齢になると視力や聴力や記憶力が衰えたりして,メガネなどでは補えない機能障害が生じることもあります.このような人々(障害者や高齢者)が,障害を持たない人と同じように製品(情報通信システム)を使えるようにすること,それがアクセシビリティ対応の目的です.視覚機能が衰えたときにWeb利用にどのような問題が生じるか,それを考えて,その問題が生じないようにWebを改善すること,それがアクセシビリティ対応です.
人間編のまとめの宿題
ここまでに学んだことを元に,以下の課題について自分の考えを述べたレポートを書いて下さい.このページに書いてあることをコピペして整理しただけのレポートには低い得点を,参考文献を調べてそれを引用しながら自分の考えを論理的に議論するレポートに高得点を与えます.引用元を適切に表示していないレポート,提出要領に沿っていないレポート,締切りに遅れたレポートなどは減点します.
- 課題: 情報通信技術(コンピュータ,ネットワーク,ロボット,コンピュータを用いたシステム・サービスを含む)と人間のコミュニケーションを良くする(人間が使いやすい,人間にわかりやすい,様々な人が使える,等の概念も含む)ために情報通信技術に必要な要素(新技術やデザインなど)は何か? (今の技術では実現不可能なアイデアでも良い)
- 提出要領: 用紙はA4.左上角をホッチキスで綴じる.手書きでもワープロでも良い.図表やポンチ絵や画像を活用するのも歓迎.表紙(レポートの題名「人間編のまとめ」,提出日付,学生番号,氏名)1枚を含めて3枚~数枚にまとめる.提出は1月11日の授業開始時.
情報通信技術
この章は,技術側の基礎知識を身につけることが目的です.学生生活や今後の生活(トラブルシューティングなど)に役立つように,生活に密着した観点で情報通信技術を取り上げます.キーとなる言葉は「用語集」で説明しました.
ネットワークセキュリティ(ウイルス,情報の保護)
新聞で報道された情報漏洩,サイト改ざんなどのニュース
自分を守り,他人に迷惑をかけないために知っておくべきことを説明します.IPAの「情報セキュリティ」,Trend Microの「インターネット・セキュリティ・ナレッジ」などが参考になると思います.
- ネチケット
- ウイルス
- サイトと掲載内容の信頼性
- 詐欺
- ネットワークを流れるデータは誰でも入手できる
- セキュリティ脅威から自分を守る最低事項:OSのアップデート(Windows Update),ウイルス対策ソフトとアップデート,不審なサイトを閲覧しない,不審なファイルをダウンロードしない,不審なメールを開かない.
宿題: IPAやTrendMicroのサイトにある情報,特に「セキュリティ対策の基礎知識」,「ウイルス対策基礎講座」,「情報セキュリティ基礎講座」などを読んで,以下のポイントをレポートにまとめる.用紙はA4.左上角をホッチキスで綴じる.手書きでもワープロでも良い.表紙(レポートの題名「セキュリティのまとめ」,提出日付,学生番号,氏名)一枚を含めて数枚程度にまとめる.提出は専攻のレポートボックス.締切りは1月31日(火)15時.
- I.ウイルスとはどういうものか? どんな種類(感染経路)があるか? (1ページ程度の詳しさで書く)
- II. セキュリティホールとは何か,それを防ぐにはどうすればよいか?(1ページ程度の詳しさで書く)
- III. Webで被るセキュリティ上の被害にはどのようなものがあるか?(1ページ程度の詳しさで書く)
- IV. あなたは,ウイルスをはじめとするネットワークの脅威から自分やPCを守るために,何をしているか? 何に気をつけているか?
- V. 自分(の情報)を守り他人(他のPCやネットワーク)に迷惑をかけないために自分が今後守る,5つのルールを書く.(例:私はXXXXします.)
注意:当然のことであるので授業中に注意しなかったが,レポート作成に当たっては出典(参考文献)を明示すること.ウェブから引用した場合やウェブの情報を参考にした場合は,ウェブのURLを書くこと.上記にあげたような情報の場合は,URL以外に,資料名や(わかる場合は)その資料の制作者も明記すること.(1月11日の授業後に追記)
インターネットの仕組み
2011年度の授業ではここは試験範囲外
配付資料:「インターネット接続の概念図」(学内限定公開,JPEGファイル)
参考:インターネットの詳細は,学科科目「情報通信ネットワーク1,2」を履修すれば,とっても深く学習できる.:-)
| 接続方法 | 典型的な最大回線速度 | 必要機材・工事 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アナログ電話 | 128kbps |
|
|
| ADSL | 最大:下り12Mbps,上り1Mbps (下り50Mbps,上り5Mbpsのサービスもある) |
|
|
| 光ファイバー(FTTH) | 100Mbps又は1Gbps |
|
|
| ケーブルテレビ(CATV) | 下り100Mbps |
|
|
| 無線LAN | 11Mbps,54Mbps |
|
|
| 高速モバイル通信 |
|
|
|
| 新技術? | 高速 |
注:bps:bit per second.1秒間に何ビットのデータを送信できるかを示す.1kbps=1000bps,1Mbps=1000kbps,1Gbps=1000Mbps.コミュニケーション専攻ホームページにある日時計の絵のファイル容量は約352kビットだから,アナログモデムの128kbpsでダウンロードすると3秒弱かかるが,光ファイバーの100Mbpsだと一瞬で終わる.Flashや動画はファイル容量がとても大きいので,回線が速くない場合はダウンロードに時間がかかる.
World Wide Webの仕組み
2011年度の授業ではここは試験範囲外
インターネットでもっともよく使われるアプリケーションであるWWWの仕組みの基本を簡単に説明します.
- WWWの起源
- WebサーバとWebブラウザの役割
- URL:ネットワーク上の情報の場所を示す住所(プロトコル名,サーバ名,ドメイン名,ファイルの置き場所,ファイル名)
- Webの2種類のプロトコル:httpとhttpsの違い
- Webで情報を公開する方法(東女の場合)
- Webの長所(ネットワークにある情報ならマルチメディアなものまでリンクして,情報の構造をマークアップしたうえで,誰でも公開でき,誰でも利用できる.)
- RIA(Rich Internet Application)の台頭
- おまけ:Webのユーザビリティとアクセシビリティ
電子メールの仕組み
2011年度の授業ではここは試験範囲外
WWWに次いでインターネットで使われるアプリケーションであり,仕事や学業をはじめとする日常生活でも欠かせない電子メールの仕組みの基本を簡単に説明します.
- メールアドレスの意味:@の左側と右側では意味が違う.@の右側は,宛先のメール送受信を管轄するメールサーバのドメイン名(つまり,ネットワークの名前).@の左側は,そのメールサーバに登録されているユーザ(アカウント)の名前.@の右側を間違えて送信すると,存在しないメールサーバを探して右往左往するので,存在しないことがわかった2-3日後に「Host Unknown」というエラーメールが送信者に返ってくる.@の左側を間違えると,正しいメールサーバにメールが配信されるが,そこには該当するユーザがいないので,すぐに「User UnKnown」というエラーメールが反ってくる.メール送信後,3日経過してもエラーメールが返ってこなかったら,そのメールは相手に配信されていると思って良い.(相手が読んでいないかもしれないけれど.)
- 2種類のメールサーバ(SMTP,POP)とメール配信の仕組み.
- メールソフトの設定:送信サーバ,受信サーバ,アカウント情報(例:GmailをPOPで受信する場合.ただし,大学のメールを受信する場合だけ,メールアドレス(及びユーザ名)は,@より後ろも含めて入力.)
- Webメールとの違い.
- 宛先指定の使い分け(To,Cc,Bcc)
- 適切な件名(Subject)の重要性:件名だけで要件が判断できることがポイント
- 適切な署名:先生宛メールでは,学生番号と氏名を明記.不要な個人情報は書かない.長くても数行以内
- メールは情報の倉庫.日時・題名・送信人で整理済み.フォルダ(タグ)の活用.全文検索も可能.
- 受信したメールに含まれている情報
- メールの差出人は偽装できる
- SPAMメールの例:開くな! クリックするな! 返信するな!
パソコン実習(基本スキル)
ノートPCを持参できる人は持参.以下の実習をします.(PCの設定を変更したり更新プログラムをインストールしたりするので,)以下の実習は必ず管理者権限(Administrator)でログインすること.
なるべく先生を頼らず,お互いに助け合って前進してください.3年生にも応援を頼みました. 以下,Windows7の場合を書きます.
- 無線LANの初期設定(専攻推奨PCは設定済み)
- 無線LANを利用するためには,一般に,アクセスポイントの名前(SSID)と暗号化に関する情報(暗号化の方法とカギ)を自分のパソコンに設定する必要があります.コミュニケーション専攻ノートPCではない人も,以下の手順で正しく設定すれば,本学のDocodemo-netを無料で利用できます.
- 無線LANを使うときは,まず無線LANの電源をONにするのをお忘れなく.PCによって異なるが,PCの前面か側面か上面に無線LANの電源を入れるスイッチがあるものもあれば,Functionキーとの組み合わせで電源をON/OFFする ものもあれば,専用ソフトでON/OFFするものもあれば,電源はONのままでOFFできないものもある.)
- Docodemo-Netを利用する際の設定は,「コミュニケーション専攻推奨ノートPC」の「Docodemo-Netの設定と利用」を参照.
- Docodemo-Netへのログイン
- 本学のDocodemo-Netは,教員と学生しか利用できません.正しい学生番号とパスワードを入れて,Docoddmo-Netの接続許可を得る必要があります.
- Docodemo-Netログインの詳細は,情報処理センターが公開している「Docodemo-Net利用の手引」を参照.(Docodemo-netログイン(Web認証)ページは,HTTPS接続の一例.証明書を使ってWebサイトの認証をしていることもわかる.)
- 無線LANの暗号鍵(WEPキー)変更
- Docodemo-netの暗号カギ(WEPキー)は毎年4月に変更されますから,コミュニケーション専攻ノートPCの人も自分で設定を変更しなければなりません.「Docodemo-Net利用の手引」の「WEPキー設定手順」に図入りで詳しく説明されていますが,ここにも簡単に書いておきます.
- 「スタートメニュー」,「コンピュータ」で開くウィンドウの左覧から「ネットワーク」と選ぶと,「ネットワーク」ウィンドウが表示される.そのウィンドウのメニューにある「ネットワークと共有センター」をクリック.
- 新しく開いた「ネットワークと共有」ウィンドウ左側のタスクの中から,「ワイヤレスネットワークの管理」をクリック.
- 「表示および修正が可能なネットワーク」の一覧の中から,「docodemo」をダブルクリック.
- 「docodemoワイヤレスネットワークのプロパティ」ウィンドウの 「セキュリティ」タブを選択.
- ネットワークセキュリティキー(K)の入力欄に新しいWEPキーを入力し,OKボタンを押す.(WEPキーが何であるかは,「Docodemo-NetのWEPキー」参照:
https://www-local.cis.twcu.ac.jp/cis/Docodemo/(学内限定公開) )
- IPアドレスの確認
- 次のいずれかの方法で,自分のPCに割り振られたIPアドレスを確認してみましょう.(「IPアドレスを確認する(Vista)」のサイトには,図入りで詳しく説明されています.)
- 同様に「ネットワークと共有センター」を表示.表示されたウィンドウの「ワイヤレスネットワーク接続(Docodemo)」をクリックすると新しいウィンドウが開くので,「詳細」ボタンをクリックすると,「ネットワーク接続の詳細」が表示される.「IPv4 IPアドレス」を見れば自分のIPアドレスがわかる.
- あるいは,「スタートメニュー」を開いて,「すべてのプログラム」から「アクセサリ」を開いて,「コマンドプロンプト」をクリックすると,新しいウィンドウが開く.そのウィンドウに,
ipconfigとタイプしてEnterキーを押すと,ネットワークに関する情報が表示されるので,「ワイヤレスネットワーク接続」のIPv4アドレスを見る.
- Windows Update
- ウイルスなどの悪意ある攻撃から自分のPCを守るためには,Windows OSを最新の状態にしておく必要があります.ネットワークに常時接続されていれば自動的にUpdateが行われる設定になっているはずですが,今回は,手動で行ってみます.手順としては,まず,Windows Update用のファイル(更新プログラム)をダウンロードし,次にそれをインストールします.(OSのように複雑なソフトの欠陥を完全になくすのは不可能に近いので,頻繁に不具合が見つかり,ウイルスなどの攻撃はその不具合をついてくる.それに対抗して,Microsoftも頻繁にOSの不具合を修正したものを配布している.それがWindows Update.だから,Windows UpdateをしていないPCは,攻撃の餌食となる危険性が高い.)以下,手動でUpdateする手順を示します.(「Microsoft Update を使用してコンピューターを最新の状態に保つ」には,OSのバージョン毎に図入りで詳しく説明してある.)
- 「スタートメニュー」,「すべてのプログラム」と開いて,「Windows Update」を探す.
- 「Windows Update」をクリックすると,新しいウィンドウが開くので,「更新プログラムの確認」をクリック.
- 画面の指示に従って,更新プログラムをダウンロードし,インストールする.
Windows VistaやWindows7の場合,「ネットワークと共有センター」を開けば,ネットワークに関する設定や,接続状況を確認することができます. 今回実習したことができれば,ネットワークに関するトラブルが生じたとき,そもそもネットワークに接続しているのか,どのネットワークにつながっているのか?などを自分で確認できるので,トラブル解決の助けとなるはずです.
さいごに
授業の締めくくりとして,この授業を今後の学業にどうつなげて欲しいかをお話しします.
使いやすい情報通信システム
本学の科目との関連
コミュニケーション専攻のカリキュラムとの関連
人間科学科のカリキュラムとの関連
その他のカリキュラムとの関連
期末試験用復習
シラバスに書いたように,期末試験には基本的な問題しか出題しません.出題範囲は以下ですが,「基本的な問題」がどこに相当するかを押さえながら,最後に復習します.
- コンピュータと人間の比較
- 認知心理学,人間工学,ヒューマン・コンピュータ・インターラクション
- ユーザビリティ(,ユニバーサルデザイン,アクセシビリティも含む)
- ネットワークセキュリティ
用語集
この授業で取り上げた用語を,授業で説明した範囲で簡単に説明します.
- ルータ
- インターネットの中心的機器.あるネットワークと別のネットワークを結びつけており,宛先IPアドレスに基づいて,インターネット上を流れるパケットを,適切なルータに転送する.ADSLや無線LANなどで使う家庭用のブロードバンド・ルータもルータの1種.
- (スイッチング)ハブ
- ネットワークの中継・分岐器.一本のLANケーブルを複数のLANケーブルに分岐できる.転送データ(フレーム)を選別するなど,インテリジェントな機能を持っている.家電店で購入できる安価なものもある.
- LAN(Local Area Network)
- 会社の支店や本店あるいはそのなかの部署,家庭,大学あるいは学部,学科,研究室など,地理的に限定された範囲で使用するネットワーク.LAN内のホスト(LANに接続されたコンピュータなど)のIPアドレスは共通の性質を持つ.
- LANケーブル
- インターネット,特にLANで用いるケーブルの総称.現在のLANはイーサネットという技術を用いているので,イーサネットケーブルともいう.LANでは,UTPケーブルと光ファイバーがよく用いられる.UTPケーブルとはUnshielded Twisted-Pairケーブルのことで,2本の銅線を撚ったものを用いている.光ファイバーは,透明なコアの中をLEDやレーザから放射された光が進んでいく.UTPケーブルは家電店でも購入できるし,PCを有線でネットワークにつなぐときには,PCのLANポートとスイッチングハブなどの間をUTPケーブルでつなぐ.
- ISP(Internet Service Provider)
- インターネットに接続するためのサービスを提供する組織.IIJ,OCN,Yahoo,Biglobe,niftyなどが,ISP企業として,家庭などからADSLや光ファイバーなどの方法でインターネットに接続するためのサービスを提供している.
- モデム,ADSLモデム
- モデムとは,信号の変調・復調を行う通信機器.電話回線を流れるアナログの音声信号をデジタルな電気信号にmodulateしたり,その逆のde-modulateしたりする.ADSLで使われるものをADSLモデムと呼ぶ.
- インターネット(the Internet)
- TCP/IPに代表される通信手段を用いて相互接続されたネットワークの集合体.ウェブは,インターネットを利用するアプリケーションの一つであって,インターネットそのものではないことに注意されたい.
- パケット
- インターネットを流れるデータの単位.ホスト(PC)からインターネットに送信されるデータは,小さな量に切り刻まれた後,パケットという形式の封筒に入れられる.パケットという封筒には送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスが記入されているので,ルータはそのIPアドレスを見て,正しい宛先にパケットを送り届けることができる.パケットを受け取ったホスト(PC)は,パケットの内部に書き込まれている情報を使って,正しい順番に並べ替えて元のデータに復元する.
- IPアドレス
- インターネットに接続された機器(PC)のネットワーク上のアドレス.同じアドレスは存在しないので,IPアドレスを用いてネットワーク機器を同定できる.実態は,32ビットの2進数.
- プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス
- IPアドレスには実は2種類あって,世界的に見て同じアドレスが重ならないグローバルアドレスと,LAN内では固有だが世界的にみると同じアドレスが重複していてもよいプライベートアドレスがあります.Webサーバ等のサーバは,インターネットからアクセスできるようにグローバルアドレスが必要ですが,個人で使うPCなどは,PCからインターネット上のサービス(Webやメール)にアクセスする必要はあってもインターネットからPC内のデータを読み出す必要はないし,読みだされたりすると危険なので,プライベートアドレスで十分なのです.ISPと契約して自宅でPCをインターネットにつなぐ場合も,プライベートアドレスが割り当てられます.(プライベートアドレスは,10.0.0.0から10.255.255.255,172.16.0.0から172.32.255.255,192.168.0.0から192.168.255.255です.自分のPCのIPアドレスがこの範囲かどうか確かめてみるのも面白いと思います.)
- httpとhttps
- WebサーバとWebブラウザ(User Agent)はHTTP(HyperText Transfer Protocol)という通信手順でデータをやりとりします.このデータはネットワークを流れるので,第三者がそのデータを盗み見することが可能です.このデータを暗号化することで通信データの安全性を高めるのが,HTTPS (Hypertext Transfer Protocol over Secure Socket Layer) です.Webサーバが本物かどうかの確認(認証),盗聴からデータを守る機能を持っています.Webサイトを使うとき,Webページに,クレジットカードの番号,大事なパスワード,第三者に知られたくない個人情報(電話番号など)を入力するときは,そのサイトがHTTPSで通信しているかどうか確認すること.HTTPで通信している場合,あなたが入力したデータが第三者に漏れたり,偽物のWebサイトにデータを盗まれたりする危険性があります.なお,WebサイトとWebブラウザがHTTPSで通信している場合,多くのWebブラウザは鍵のアイコンを表示しています.
- メールで用いるプロトコル(通信手順)
- メールソフト(Mail User Agent)が自分のネットワークを担当する送信メールサーバ(自宅近くの郵便局のようなもの)にメールを送る際は,SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)という通信手順を用いる.自ネットワークのメールサーバは,メールアドレスの@の右側を見て,そのネットワークを担当する宛先ネットワークのメールサーバ(相手の家を担当する郵便局のようなもの)に(SMTPという通信手順で)メールを配信する.宛先ネットワークのメールサーバの受信箱(私書箱,あるいは郵便受けのようなもの)に貯まったメールは,POPという通信手順で取りに行かないと,相手のパソコンのメールソフトには取り込まれない.一般に,POPでメールを取り込むと,受信箱のメールは消えて,メールを読んだパソコンにだけメールが残るが,受信箱のメールを消さないように設定することもできる.ただし,どんどんメールがたまってメールがあふれるとエラーになり,それ以上のメールを受信できない.GmailはWebメールなので,POPが省略されていて,Googleの受信箱にたまったメールをWebで直接読むことができる.また,メールソフトがなくても,Gmailで直接メールを書くこともできる.
- Webメール
- (古典的な)メール利用では,自分のPCのメールソフト(例:Outlook,Thunderbird,Mac OS X Mail)を使ってメールを送受信します.この場合,メールソフト(Mail User Agent,メール・クライアント・ソフトとも言う)にアカウント情報や,使用するSMTPサーバとPOPサーバの情報を設定しなければなりません.Webメールは,自分のPCにメールソフトがなくても,ウェブブラウザで指定されたURLにアクセスするだけで,(アカウント情報を教えてあげる必要はあるけれど)メールを送受信できるサービスです.メールはすべてメールサーバ上に保存されているので,POPで自分のPCに取り込む必要はないし,インターネットにつながっていればどこからでも,PCでも携帯でも,ブラウザさえあればメールを読み書きできます.Gmail(Googleメール)はWebメールの代表例.Webメールであっても,PCのメールソフトを設定すれば,POPなどの方法で自PCにメールを取り込むことも可能なことが多い.
参考文献
この授業に関連する文献を下記に挙げます.「図書館」と書いてある本は本学の図書館にあります.赤字はシラバスで挙げた本.
HCI,心理学,認知科学関連
- 「誰のためのデザイン?」,D.A.ノーマン著,野島訳,新曜社、3300円.「図書館」
-
著名な認知科学者であるDonald A. Normanが書いた本.我々の身の回りにあふれている使いにくい機器を題材にして,ユーザ中心の設計思想の重要性を述べています.製品を手にした時にどう操作すればよいかすぐにわからないようなデザインや,その装置が今どんな状態にあるのかわからないようなデザインは駄目だということが書いてあります.また,この本で彼は以下に示すデザインの7原則を示しています.
デザインの7原則- 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する.(すべて覚えていなくても外界の状況が手がかかりになる.)
- 作業の構造を単純化する.(Keep it simple.)
- 対象を目に見えるようにして,実行の隔たりと評価の隔たりに橋をかける.(どういう状態にあるのかわかりにくいデザインは駄目.携帯電話のイルミネーションが光っている.でも何故?というのは駄目で,ぱっと見ただけでメール着信だとか留守番電話だとかがわかるように作るべき.)
- 対応付けを正しくする.(スイッチを右にスライドさせたら右側のランプがつく.スライドが上下方向のスイッチだと左右との対応関係が不明になる.)
- 自然の制約や人工的な制約の力を利用する.(ノブがついていないドアは,押すドア.引き手がついているドアは引くドア.)
- エラーに備えたデザインをする.(人間は間違う生き物だから,エラーを犯しても元に戻れるようにする.)
- 以上のことが全てうまくいかないときは標準化する.(あらゆる装置で同じデザインになっていれば戸惑うことはない.)
- 「認知科学の展開」,西川,阿部,仲著.日本放送出版協会,3000円
- 認知科学について説明した放送大学の教材.
- 「認知的インターフェース」,海保博之・原田悦子・黒須正明 著,新曜社,1600円.「図書館」
- 認知心理学の研究者3人の共著.コンピュータを使う人間の認知(頭というか心の働き)を考慮しながら人間とコンピュータのインターフェースについて勉強するのに格好の入門書.短い本!
- 「グラフィック認知心理学」,森他,サイエンス社,2400円.「図書館」
- 独学で読むには難しいかもしれないが,認知心理学を大学生が学ぶのに最適な本.
- 「認知科学」,大島尚編,新曜社,1500円
- ボリュームが短いので,認知科学について簡単に知るのに適している.
- 「心と脳-認知科学入門」,安西祐一郎著,岩波新書,860円
- 2011年9月に出た新書
- 「『使いやすさ』の認知科学」,原田悦子編,共立出版,「図書館」
- 認知科学の分野から「使いやすさ」を学際的に考えて,関連する論文をまとめた特集.
- 「パソコンを隠せ,アナログ発想でいこう!」,D.A.ノーマン著,安村他訳,新曜社,3300円.「図書館」
- 同じくノーマンの本.何故今日のパソコンは機能ばかりが多くて使いにくいのか,どうすればこの状況を打ち破り,使いやすい情報機器を作ることができるのかというテーマを取り上げています.この本で彼が提唱している「情報アプライアンス」というのは,目的ごとに専門化したコンピュータが組み込まれた装置で,マニュアルなどなくても見ただけで使い方がわかる装置です.情報アプライアンスは,今のパソコンが,なんでも出来る代わりに使いにくく,しばしば調子が悪くなるのとは対照的な情報機器です.またこの本の中で彼は技術中心の製品開発からユーザ中心の製品開発に移行する重要性も述べています.技術が充分成熟すれば,そしてその製品の背後にある技術が目立たないようにデザインされてれば,オートマチック車の運転と同じくらい簡単に操作できる情報機器が実現するはずです.
- 「ヒューメインインターフェース―人に優しいシステムへの新たな指針ー」,Jef Raskin著,村上雅章訳,ピアソン・エデュケーション,2900円.「図書館」
- Macintoshの生みの親であるRaskinが書いた本.Normanとは違った視点から,人に優しい(使いやすい)システムを作るために必要なインターフェースについて述べている.
- 「ヒューマンコンピュータインタラクション(情報処理学会編集IT Text)」,岡田他共著,オーム社,ISBN4-274-13249-8,2800円.「図書館」
- HCIの入門書として適している.最新の話題も含めて網羅されている.
- 「認知インターフェース(情報処理学会編集IT Text)」,加藤隆著,オーム社,ISBN4-274-13249-5,2800円.「図書館」
- ヒューマンインターフェースの認知的要因に焦点を当てて書いてある.
- 「情報処理心理学入門I,II,III」,リンゼイ&ノーマン,サイエンス社,2900円.「図書館」
- 古典的名著.
- 「インタラクティブデザイン論」,クロフォード著,安村監訳,オーム社,4500円
- 「人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学」,D.A.ノーマン著,佐伯訳,新曜社,3600円.「図書館」
- 「アフォーダンス -新しい認知の理論」,佐々木正人著,岩波書店,1000円
- アフォーダンスについてわかりやすく説明してある.
- 「テクノロジー・ウォッチング-ハイテク社会をフィールドワークする」,D.A.ノーマン著,佐伯訳,新曜社,2900円.「図書館」
- 「コンピュータはむずかしすぎて使えない!」、アラン・クーパー著、山形浩生訳、翔泳社,2200円.「図書館」
- アラン・クーパーはVisual Basicを開発した有名なプログラマー.その彼が、「使いやすいソフトを作るためには,(プログラマーがプログラミングに入る前に)操作デザイナーがユーザのためのデザインをして,そのデザインにしたがってプログラミングすることが重要である」と主張している本.
- 「人はなぜコンピュータを人間として扱うか-「メディアの等式」の心理学-」,リーブス&ナス著,細馬訳,翔泳社.「図書館」
- 人はコンピュータのような新しいメディアに対しても人と同じような反応を示すことを心理学の実験を元に説明した本.
- 「感覚・知覚心理学ハンドブック」「図書館」
ユーザビリティ関連
- 「ユーザビリティ・エンジニアリング原論 -ユーザのためのインターフェースデザイン」, J.ニールセン著、篠原監訳,東京電機大学出版局、3700円.「図書館」
- ヤコブ・ニールセンもノーマンと並んでこの分野で有名な人です.ニールセンはウェブのユーザビリティの分野でも有名です.二人はNielsen Norman Groupという会社を作って,よい「ユーザ体験」をさせる(ユーザ中心の,ユーザビリティを考慮した)デザインの仕事やコンサルタントをしています.この本にはユーザビリティ原則10箇条が解説されています.是非読んでおくと良いと思います.
ユーザビリティ原則10箇条
- シンプルで自然な対話を提供する.
- ユーザの言葉を使う.
- ユーザの記憶負荷を最小限にとどめる.
- 一貫性を保つ.
- フィードバックを提供する.
- 出口を明らかにする.
- ショートカットを提供する.
- 適切なエラーメッセージを使う.
- エラーを防ぐ.
- ヘルプとドキュメントを提供する.
- 「ユーザ工学入門」,黒須他著,共立出版,3200円.「図書館」
- この本でいう「ユーザ工学」は,「ユーザの分析」と「ユーザビリティの評価」を含んでいる.「ユーザの分析」では,質問紙調査,個人面接,民族誌的インタビューなどの調査手法が取り上げられている.「ユーザビリティ」は使いやすさやわかりやすさのことで,ユーザビリティとユーティリティ(機能が多いとか性能がよい)の両方が優れた製品が,いわゆる使い勝手が良い製品になる.ユーザビリティ評価の手法として,ユーザビリティテスティングの仕方などが書いてある.
- 「ユーザビリティテスティング-ユーザ中心のものづくりに向けて-」,黒須正明編著,共立出版,3300円.「図書館」
- ユーザビリティテストの実施方法などを解説してある.
ユニバーサルデザイン関連
- ユニバーサルデザイン研究会編:「新ユニバーサルデザイン」(日本工業出版)
- 「ユニバーサルデザイン実践ガイドライン」,日本人間工学会編,共立出版,2500円.「図書館」
- ユニバーサルデザインを実践する際に役立つガイドライン.
- 「ユニバーサルデザインとはなにか -バリアフリーを超えて-」,古瀬敏 編著,都市文化社選書,2000円.「図書館」
- ユニバーサルデザインの第一人者である著者が,ユニバーサルデザインについてわかりやすく解説した本.
ユニバーサルデザインの7原則
- 誰にでも公平に使用できること
- 使う上での自由度が高いこと
- 簡単で直感的にわかる使用方法となっていること
- 必要な情報がすぐ理解できること
- うっかりエラーや危険につながらないデザインであること
- 無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できること
- 接近して使えるような寸法・空間となっていること
- 「情報アクセシビリティとユニバーサルデザイン」,C&C振興財団編,アクセシビリティ研究会著,アスキー.「図書館」
ユーザ・障害・疾病等の分類関連
- ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)
- 世界保健機関(WHO)で採択された,人間の生活機能と障害の分類法がICF.厚生労働省が作成した日本語版,「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」もある.
- 「ICD-10 (International Classification of Diseases)
- ICD-10は,WHOが作成した疾病の分類表.和訳もある:「ICD-10 国際疾病分類第10版」
データ分析,統計関連
- 「プロトコル分析入門」,海保,原田編著,新曜社,2500円.「図書館」
- 発話データの分析について詳しく書いてある本.ユーザビリティテストの時に必要になる.
- 「増補版:人間工学ガイド-感性を科学する方法-」,福田忠彦・福田亮子監修,サイエンティスト社,3000円
- 人間工学で用いられる評価手法を実践重視で解説した本.官能評価法(ME法,正規化順位法,一対比較法,SD法,評価グリッド法),他感的評価法(ワークサンプリング法,サーブリック法など),複合評価法(プロトコル分析法など)について具体的な例とともに書いてあるので卒業研究にも即役に立つ.おすすめ本です.
- 「認知研究の技法」,海保,加藤著,福村出版,2600円.「図書館」
- 「あなたもできるデータの処理と解析」,岩淵千明編著,福村出版,ISBN4-571-20058-7,2600円.「図書館」
- 社会心理学を専門とする著者が,ユーザの視点に立って,卒論に必要な統計の知識を体系的に説明した本.
学科談話室にも参考になる本が置いてあります.
ウェブ関連
- 益子他:「現場のプロから学ぶXHTML+CSS」毎日コミュニケーションズ.
- 「コンピュータIIE(Webでの情報表現)」の教科書です.
- 「HTML&XHTML」,C. Musciano, B. Kennedy著,原訳,オライリー「図書館」
- ボリュームがあるが,ウェブを正式に学びたい人は読んで欲しい.
- 「CSS完全ガイド」,,オライリー・ジャパン.
- CSSの仕様について詳しく書いてある.
- (X)HTMLやCSSの解説書.
- たとえば,「スタイルシート辞典」,(株)アンク著,翔泳社.
- 渡辺隆行:「ユニバーサル・ウェブ -誰もが使いやすいWebサイトの構築-」
- 「コンピュータIIE」のテキスト
- 「ウェブ・アクセシビリティ-すべての人に優しいウェブ・デザイン-」,Paciello著,ソシオメディア監訳,ASCII,3800円.「図書館」
- ウェブアクセシビリティの分野では有名な本.
- 富士通株式会社 総合デザインセンター著:「よくわかる Webアクセシビリティ&ユーザビリティ」,FOM出版
- ウェブのユーザビリティとアクセシビリティに関して,わかりやすく書いてある.富士通のチェックツールも同梱されているので,初心者には適していると思う.ただし,JIS X 8341-3とは少し内容がずれている.
- 『Webアクセシビリティ~ 標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~』,サッチャー他著,渡辺他監修・訳.毎日コミュニケーションズ.3800円.
- Webアクセシビリティ大全とでも呼ぶべき本格的な書籍.「1章:Webアクセシビリティを理解する」はウェブでも公開.
- ウェブアクセシビリティ基盤委員会が公開している資料
- 「ウェブアクセシビリティ基盤委員会:公開資料&リンク集」参照.JIS X 8341-3:2010とWCAG 2.0に関する重要な資料が置いてあります.
レポートや論文の書き方
- 4年次演習のための「卒論の書き方」
- 「論文・レポートのまとめ方」,古郡廷治著,ちくま新書122,700円.「図書館」
- 「レポートの組み立て方」,木下是雄,ちくま学芸文庫,780円.「図書館」
- 木下さんは「理科系の作文技術」(中公新書)などで有名な方ですが,この本は理系文系に関係なく読める本です.
- 「『考える』ための小論文」,西・森下共著,ちくま新書110,720円.「図書館」
- 文系の大学入試では小論文が課されることが多いです.この本は,「入試問題を素材として志向と書き方を訓練する」,「広く考えて書きたい人-独自性のある文章を目指したい人のための」(2つとも前書きより引用)本です.
- 「レポート・論文の書き方入門」,河野哲也著,慶應義塾大学出版会,1000円.「図書館」
- テキスト批評の練習法が面白い.
- 「論文の書き方」,清水幾多郎著,岩波新書.「図書館」
- 極めて有名な本.卒論に取り掛かる前に是非読んでください.「書く」という作業がいかに大変なものかがわかる.
- 「情報検索のスキル」,三輪眞木子著,中公新書1714,740円.「図書館」
- 「パラグラフ・ライティング入門」,橋内,研究社出版.
- 絶版かもしれないが,とても良い本.
まとめ
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© 2005-2011, Takayuki Watanabe