2004年度 3年次演習の紹介
Tue Jun 08 15:04:05 JST 2004
渡辺隆行
1 3年次演習 −人間と情報通信システムのコミュニケーション−
2003年度の2年生と、2004年度の3年次ゼミ生に向けたページです。
2004年度の2年生に向けたページは、「3年次演習の紹介」参照。
1.1 3年次演習の概要
3年次演習では,「人間と情報通信システムのコミュニケーション」を旗印に,(ウェブの)ユーザビリティ(使いやすさ)やユニバーサルデザインに関連するテーマについて,参加者の興味や関心に基づいてグループワークを生かしながら研究を進めたいと思います.前期は,文献や先行研究の調査をベースにこの分野の理解を深めていきます.後期は,問題を発見しそれを解決する方法を議論していく過程を通じて,各自の卒業研究につながっていくようにします.コンピュータが好きな人もそうでない人も歓迎します.
1.2 キーワード
私が関心を持っているテーマは,以下のキーワードで表すことができます.
ユーザビリティやユニバーサルデザインはコンピュータだけに関する話ではなく,身の回りにあるものすべてに当てはまる話ですから,コンピュータが得意或いは好きでなければできないということはありません.皆さんの身の周りに使いにくいものはありませんか?どうすれば使いやすくなるのでしょう?そういうことを考えてみませんか?参考文献に示す書籍や先行研究を勉強しながらこの分野の研究手法を学び,卒研に結び付けてみませんか?
なお,2004年度は「Webのユーザビリティ」を中心に勉強中で,コミュニケーション学科のWebサイトのリニューアルを計画しています.
- ヒューマン・コンピュータ・インターラクション
- 人間とコンピュータの関わりを考えるのが,ヒューマン・コンピュータ・インターラクション(HCI)です.人間とコンピュータ(情報通信システム)がどのように関わっていけば使いやすくなると思いますか?HCIはとても広い分野ですが,特に下記に示すキーワード;ユーザビリティ,ユニバーサルデザイン,アクセシビリティ,ウェブの利用,音声インターフェースに興味があります.
- ユーザビリティ
- 使いやすさやわかりやすさのこと.参考文献:「ユーザ工学入門」,「ユーザビリティ・エンジニアリング原論」.
- ユニバーサルデザイン
- 出来るだけ多くの人(高齢者,障害者,子供,女性,外国人など)が使えるように製品・システム・ソフト・サービスなどをデザイン(設計)すること.参考文献:「ユニバーサルデザインとはなにか −バリアフリーを超えて−」,「ユニバーサルデザイン実践ガイドライン」.「高齢化社会を支えるインターネット −誰でも使いやすい情報通信システム−」のスライドの中でも説明しています.
- アクセシビリティ
- 製品・システム・ソフト・サービスなどを利用できること.たとえばパソコンを音声化すれば視覚障害者もパソコンを利用できます.これを実践したのが,Bilingual Emacspeak Projectです.「Linux版BEPのデモ」のページで,視覚障害者がBEPを使う様子を収めたMP3音声やQuickTimeムービーを公開しています.
- ウェブ
- インターネットの中でもウェブに注目しています.MNL(Multimedia&Network Lab)のようなポータルサイトを利用して,共通の関心を持つ人の間のコミュニケーション支援を図ることや,「Universal Web, the Next Generation」及び「誰もが使いやすいウェブサイトを構築する方法」に書いたようなウェブの実現に興味があります.2003年11月にW3Cの会議に参加してから,Semantic Webを利用したユニバーサルウェブの実現にも興味を持っています.
- 音声インターフェース
- 人間と人間は会話することで情報交換しています.でも人間とコンピュータは,キーボードやマウスで情報を入力し,画面表示を読むことで情報出力をしています.この制約のために,キーボードを覚えなければコンピュータを使えませんし,コンピュータの前に座っていなければいけません.もし人間とコンピュータが音声で対話できたらどうなるでしょう?視覚障害者用の音声出力システムを元に,このような対話システムを考えてみたいと思っています.参考文献:「口ごもるコンピュータ」.
- 情報
- 教職免許「情報」をはじめとする情報系の資格取得.コンピュータやインターネット(ポータルサイトなど)を使ったグループベースでの情報教育支援方法.
- 問題発見,物つくり,評価
- 現代社会に存在する問題を発見し,それを解決する方法を考え,できればその方法を実践し,その方法の有効性を客観的に評価する.そんな卒研をしましょう.
1.3 卒論テーマの例
授業ではプログラミングやコンピュータサイエンスやデータベースなどの情報システムやインターネットについて教えていますが,卒論に関しては,コンピュータと関係ないテーマでも構いません.但し私は上記のキーワードに関連したテーマやコンピュータ及びインターネットに詳しいので,こうしたテーマ,特に「Web」,「ユーザビリティ」,「アクセシビリティ」に関連したテーマ,の方が卒論を書きやすいと思います.
上記のキーワードの説明や下記の参考文献の注釈を読んでも渡辺ゼミでどのような卒研ができるのかよくわからない人は,渡辺にお問い合わせください.
2 参考文献
渡辺ゼミに関係する書籍です.(「図書館」と書いてあるのは,東女の図書館にも置いてあります.)
2.1 Webユーザビリティ必読文献
2004年度3年次ゼミ生は,夏休みに全部読みおえておくこと.
- 「標準ウェブユーザビリティ辞典」,ソシオメディア著,インプレス発行.2600円「図書館」
- 2004年度3年次演習で使用.
- 「誰のためのデザイン?」,D.A.ノーマン著,野島訳,新曜社、3300円.「図書館」
- 著名な認知科学者であるDonald A. Normanが書いた本.我々の身の回りにあふれている使いにくい機器を題材にして,ユーザ中心の設計思想の重要性を述べています.製品を手にした時にどう操作すればよいかすぐにわからないようなデザインや,その装置が今どんな状態にあるのかわからないようなデザインは駄目だということが書いてあります.また,この本で彼は以下に示すデザインの7原則を示しています.
デザインの7原則
- 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する.(すべて覚えていなくても外界の状況が手がかかりになる.)
- 作業の構造を単純化する.(Keep it simple.)
- 対象を目に見えるようにして,実行の隔たりと評価の隔たりに橋をかける.(どういう状態にあるのかわからいにくいデザインは駄目.携帯電話のイルミネーションが光っている.でも何故?というのは駄目で,ぱっと見ただけでメール着信だとか留守番電話だとかがわかるように作るべき.)
- 対応付けを正しくする.(スイッチを右にスライドさせたら右側のランプがつく.スライドが上下方向のスイッチだと左右との対応関係が不明になる.)
- 自然の制約や人工的な制約の力を利用する.(ノブがついていないドアは,押すドア.引き手がついているドアは引くドア.)
- エラーに備えたデザインをする.(人間は間違う生き物だから,エラーを犯しても元に戻れるようにする.)
- 以上のことが全てうまくいかないときは標準化する.(あらゆる装置で同じデザインになっていれば戸惑うことはない.)
- 「認知的インターフェース」,海保博之・原田悦子・黒須正明 著,新曜社,1600円.「図書館」
- 認知心理学の研究者3人の共著.コンピュータを使う人間の認知(頭というか心の働き)を考慮しながら人間とコンピュータのインターフェースについて勉強するのに格好の入門書.
2.2 3年生の間に目を通しておいてほしい本
以下の本を読んで理論武装しておくと,卒論執筆に役立ちます.2004年度3年次ゼミ生は,少なくとも1冊を夏休みの間に読んでおいてください.
- 「ユーザビリティ・エンジニアリング原論 −ユーザのためのインターフェースデザイン」,
J.ニールセン著、篠原監訳,東京電機大学出版局、3700円.「図書館」
- ヤコブ・ニールセンもノーマンと並んでこの分野で有名な人です.ニールセンはウェブのユーザビリティの分野でも有名です.二人はNielsen Norman Groupという会社を作って,よい「ユーザ体験」をさせる(ユーザ中心の,ユーザビリティを考慮した)デザインの仕事やコンサルタントをしています.この本にはユーザビリティ原則10箇条が解説されています.
ユーザビリティ原則10箇条
- シンプルで自然な対話を提供する.
- ユーザの言葉を使う.
- ユーザの記憶負荷を最小限にとどめる.
- 一貫性を保つ.
- フィードバックを提供する.
- 出口を明らかにする.
- ショートカットを提供する.
- 適切なエラーメッセージを使う.
- エラーを防ぐ.
- ヘルプとドキュメントを提供する.
- 「ユーザ工学入門」,黒須他著,共立出版,3200円.「図書館」
- この本でいう「ユーザ工学」は,「ユーザの分析」と「ユーザビリティの評価」を含んでいる.「ユーザの分析」では,質問紙調査,個人面接,民族誌的インタビューなどの調査手法が取り上げられている.「ユーザビリティ」は使いやすさやわかりやすさのことで,ユーザビリティとユーティリティ(機能が多いとか性能がよい)の両方が優れた製品が,いわゆる使い勝手が良い製品になる.ユーザビリティ評価の手法として,ユーザビリティテスティングの仕方などが書いてある.
- 「ユーザビリティテスティング−ユーザ中心のものづくりに向けて−」,黒須正明編著,共立出版,3300円.「図書館」
- ユーザビリティテストの実施方法などを解説してある.
- 「ユニバーサルデザイン実践ガイドライン」,日本人間工学会編,共立出版,2500円.「図書館」
- ユニバーサルデザインを実践する際に役立つガイドライン.
- 「『使いやすさ』の認知科学」,原田悦子編,共立出版,「図書館」
- 認知科学の分野から「使いやすさ」を学際的に考えて,関連する論文をまとめた特集.
- 「プロトコル分析入門」,海保,原田編著,新曜社,2500円.「図書館」
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- 「ウェブ・アクセシビリティ−すべての人に優しいウェブ・デザイン−」,Paciello著,ソシオメディア監訳,ASCII,3800円.「図書館」
- この分野では有名な本.
- 「Web情報アーキテクチャ−最適なサイト形成のためのアプローチ−」,ローゼンフィールド,モービル著,篠原,ソシオメディア訳,オライリージャパン.4400円「図書館」
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- 「ユニバーサルHTML/XHTML」,神崎正英著,毎日コミュニケーションズ.2200円「図書館」
- 誰でも情報を共有できるWebページを自分で作成しようと思う人に是非読んでほしい.
2.3 その他
以下の本も参考になると思います.
2.3.1 ユニバーサルデザイン,ユーザビリティ,アクセシビリティ 関連
- 「ユニバーサルデザインとはなにか −バリアフリーを超えて−」,古瀬敏 編著,都市文化社選書,2000円.「図書館」
- ユニバーサルデザインの第一人者である著者が,ユニバーサルデザインについてわかりやすく解説した本.
ユニバーサルデザインの7原則
- 誰にでも公平に使用できること
- 使う上での自由度が高いこと
- 簡単で直感的にわかる使用方法となっていること
- 必要な情報がすぐ理解できること
- うっかりエラーや危険につながらないデザインであること
- 無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できること
- 接近して使えるような寸法・空間となっていること
- 「ウェブユーザビリティ −顧客を逃がさないサイトづくりの秘訣−」,
J. Nielsen著,篠原監修/グエル訳,MDNコーポレーション,2800円.「図書館」
- ユーザビリティ(使いやすさ)の専門家として著名なNielsenが使いやすいWebサイトを構築する方法を述べた本.
- 「ウェブユーザビリティの法則−ストレスを感じさせないナビゲーション手法とは−」,Steve Krug著,中野恵美子訳,ソフトバンク.「図書館」
- 見やすいWebサイトを作る要点と方法を簡潔にまとめた本.
- 「情報アクセシビリティとユニバーサルデザイン」,C&C振興財団編,アクセシビリティ研究会著,アスキー.「図書館」
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- 「Designing with Web Standards」,Jeffrey Zeldman著(和訳進行中?)
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2.3.2 ヒューマン・コンピュータ・インターラクション関連
- 「パソコンを隠せ,アナログ発想でいこう!」,D.A.ノーマン著,安村他訳,新曜社,3300円.「図書館」
- 同じくノーマンの本.何故今日のパソコンは機能ばかりが多くて使いにくいのか,どうすればこの状況を打ち破り,使いやすい情報機器を作ることができるのかというテーマを取り上げています.この本で彼が提唱している「情報アプライアンス」というのは,目的ごとに専門化したコンピュータが組み込まれた装置で,マニュアルなどなくても見ただけで使い方がわかる装置です.情報アプライアンスは,今のパソコンが,なんでも出来る代わりに使いにくく,しばしば調子が悪くなるのとは対照的な情報機器です.またこの本の中で彼は技術中心の製品開発からユーザ中心の製品開発に移行する重要性も述べています.技術が充分成熟すれば,そしてその製品の背後にある技術が目立たないようにデザインされてれば,オートマチック車の運転と同じくらい簡単に操作できる情報機器が実現するはずです.
- 「ヒューメインインターフェース―人に優しいシステムへの新たな指針ー」,Jef Raskin著,村上雅章訳,ピアソン・エデュケーション,2900円.「図書館」
- Macintoshの生みの親であるRaskinが書いた本.Normanとは違った視点から,人に優しい(使いやすい)システムを作るために必要なインターフェースについて述べている.
- 「ヒューマンコンピュータインタラクション(情報処理学会編集IT Text)」,岡田他共著,オーム社,ISBN4-274-13249-8,2800円.「図書館」
- HCIの入門書として適している.最新の話題も含めて網羅されている.
- 「人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学」,D.A.ノーマン著,佐伯訳,新曜社,3600円.「図書館」
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- 「テクノロジー・ウォッチング−ハイテク社会をフィールドワークする」,D.A.ノーマン著,佐伯訳,新曜社,2900円.「図書館」
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- 「コンピュータはむずかしすぎて使えない!」、アラン・クーパー著、山形浩生訳、翔泳社,2200円.「図書館」
- アラン・クーパーはVisual Basicを開発した有名なプログラマー.その彼が、「使いやすいソフトを作るためには,(プログラマーがプログラミングに入る前に)操作デザイナーがユーザのためのデザインをして,そのデザインにしたがってプログラミングすることが重要である」と主張している本.
- 「口ごもるコンピュータ」,岡田美智雄著,共立出版,1450円.「図書館」
- コンピュータのような人工物が我々の生活に入り込んでいくとき,コンピュータにはどのような能力が求められるのか,に関してわかりやすく書いてある本.口ごもるコンピュータとは,人間と対話できないコンピュータのこと.
- 「人はなぜコンピュータを人間として扱うか−「メディアの等式」の心理学−」,リーブス&ナス著,細馬訳,翔泳社.「図書館」
- 人はコンピュータのような新しいメディアに対しても人と同じような反応を示すことを心理学の実験を元に説明した本.
2.3.3 レポートや論文の書き方
卒論執筆に役立ちます.
- 「論文・レポートのまとめ方」,古郡廷治著,ちくま新書122,700円.「図書館」
- 必読.
- 「レポートの組み立て方」,木下是雄,ちくま学芸文庫,780円.「図書館」
- 必読.
- 「『考える』ための小論文」,西・森下共著,ちくま新書110,720円.「図書館?」
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- 「レポート・論文の書き方入門」,河野哲也著,慶應義塾大学出版会,1000円.「図書館」
- テキスト批評の練習法が面白い.
- 「論文の書き方」,清水幾多郎著,岩波新書.「図書館」
- 極めて有名な本.卒論に取り掛かる前に是非読んでください.「書く」という作業がいかに大変なものかがわかる.
2.3.4 その他の分野
- 「あなたもできるデータの処理と解析」,岩淵千明編著,福村出版,ISBN4-571-20058-7,2600円.「図書館」
- 社会心理学を専門とする著者が,ユーザの視点に立って,卒論に必要な統計の知識を体系的に説明した本.
- 「情報検索のスキル−未知の問題をどう解くか−」,三輪眞木子著,中公新書1714,740円.「図書館」
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- 「CODE」,ローレンス・レッシグ著,山形訳,翔泳社.「図書館」
- おもしろい!詳細は時間ができたときに書きます.
- 「コモンズ」,ローレンス・レッシグ著,山形訳,翔泳社.「図書館」
- おもしろい!詳細は時間ができたときに書きます.